不動産会社、ファンドの資金繰りが急速に悪化している。資金調達の目途がつかず、売買取引がキャンセルになる物件が続出。都心の一部では、このところ右肩上がりだった不動産価格が下落に転じた。貸し渋りによって追い詰められた不動産業者が「投げ売り」に走るのは必至で、3月暴落説がささやかれている。わが世の春を謳歌していたはずの不動産業界に何が起こったのか。
東京都心の霞が関や六本木に近く、1万6000平方メートルもの広大な敷地を有するホテル「虎ノ門パストラル」。農林漁業団体職員共済組合(農林年金)が売りに出し、昨年9月末に落札された。落札価格は2300億円。鑑定価格を1000億円以上も上回る高値で、不動産業界関係者を驚かせた物件である。
落札したのは、森トラストとダヴィンチ・アドバイザーズ連合。ダヴィンチは2006年、東京駅隣の「パシフィック・センチュリー・プレイス」のオフィス部分のみを2000億円で買収するなど、内外投資家から集めた豊富なファンド資金を武器にして、誰もが目を剥く金額で高額物件を次々に取得してきた。
業界の風雲児と呼ばれる金子修社長は、1年あまり前には「カネは手元に唸っているのに、肝心の物件が見つからない」と豪語していたものだ。
そのダヴィンチが、今回の虎ノ門パストラル買収に当たっては、資金調達にそうとう苦労したというから、不動産業界も様変わりである。買収資金は森トラストと折半で負担する取り決めになっていたため、ダヴィンチの必要資金額は1000億円強。借り入れのおよそ半分を新生銀行からの調達に頼った。
「会社の信用力ではなく、物件の優良度で融資額を決めるノンリコースローンとはいえ、いまやダヴィンチに貸すのは新生かあおぞら銀行くらい。それも、彼らが半分以上出す契約じゃないと、邦銀はどこも乗らない」