大手医薬品卸の一角を占める東邦ホールディングスを取り巻く経営環境が混沌としている。
事業の根幹をなす人財配置は普遍的な最重要課題だが、中長期的に東邦HDを強力に率いる「舵取り役」は見えてこない。こうした状況は、濱田矩男氏が20年以上にわたり、東邦グループの経営トップに君臨した副作用とも言える。濱田氏は22年6月に取締役を退任してからも「最高顧問」として社内で影響力を持ち続けたまま23年11月、83歳で鬼籍に入った。
東邦HDは絶対的存在の濱田氏を失ったあと、有働敦CEOを中心に人事、ガバナンス、コンプライアンス体制整備など、さまざまな社内改革を進めてきた。
ところが、悲報はなぜこうも続くものなのだろうか。
東邦HDは24年11月、有働氏が死去したと発表した。体調不良により同年6月にCEOを退き、11月からは顧問として事業成長のため尽力する構えを見せていたが、不帰の客となった。享年60歳。頭頸部がんだった。
有働氏から急きょCEOのバトンを受けたのは財務責任者の枝廣弘巳CFO。長年燻り続けてきた「創業家・松谷家への大政奉還」はこの重大局面においても実現していない。地方卸出身で「外様」の枝廣氏が「緊急登板」している状態だ。