会社によくいるのが部下に重要な仕事を任せず、なんでも自分でやってしまう上司だ。しかし、リーダーにとって最も大切な行動のひとつは「デレゲーション(権限委譲)」であり、つまりは部下に重要な仕事を任せること。全部自分でやりたがる人は、リーダーではなく「個人貢献者」にすぎないのだ――。※本稿は、ロッシェル・カップ氏『DX時代の部下マネジメント-「管理」からサーバント・リーダーシップへの転換』(経団連出版)の一部を抜粋・編集したものです。
リーダーにとって最も重要な行動
「デレゲーション」とは?
リーダーとは、他の人たちの行動を鼓舞し、一致団結させて、共通の目標に向かって力を合わせるようにする人のことです。リーダーであることの重要なポイントは、すべてを自分でやるのではないという点です。すべての仕事を自分でこなす人はリーダーではなく、「個人貢献者(individual contributor)」です。リーダーにはフォロワーが必要です。逆に言うなら、フォロワーがいなければ、リードはできません。
リーダーにとって最も重要な行動のひとつは、デレゲーション(権限委譲)です。デレゲーションとは、部下に重要な仕事を任せること、言い換えると、リーダーになる前に慣れ親しんできた仕事を手放すということです。
たとえその仕事が得意だとしても、好きだったとしても、です。なぜなら、どんなに才能があっても、どんなに多くの時間を仕事に費やしても、ひとりでは、チームでできるほどの成果を上げることはできないからです。経営コンサルタントのジョン・C・マクスウェルはこう言っています。
部下に仕事を任せることは、多くのよい影響をもたらします。自分が担当から外れることで、自分の負担が減ります。時間管理がしやすくなり、リーダーとしてやるべきこと(ビジョンや目標の設定、コーチングやフィードバックの実施、目標達成に向けた進捗状況のモニタリングなど)に集中できるようになります。
こうした、リーダーに求められる活動には時間がかかり、あらゆる仕事の細部にまで没頭することとは相容れないからです。リーダーには、一歩引いてチームの仕事の全体像を考える時間が必要です。チーム内の日常業務をこなすことで1分1秒が完全に埋まっているようでは、リーダーの仕事をするのは不可能です。リーダーとして、戦略的に考える時間を確保する必要があります。