低迷する国内新車販売にとって耳を疑うようなことが、イオンレイクタウン内にオープンしたトヨタオートモールで起きている。

 イオンレイクタウンとは10月2日に埼玉県越谷市にオープンした国内最大級のショッピングセンター。その広さはなんと東京ドーム5個分、565店舗が入居する。想定商圏人口は330万人、年間来店客数は2500万人を見込み、JR武蔵野線には直結の駅が新設され、駐車場も8200台を確保している。

 国内自動車市場は成熟し、新車販売台数は毎年、前年割れが続いている。王者トヨタといえども例外ではなく、燃費の良いクルマへ乗り換えを薦める「エコ替え」やインターネットでのバーチャル試乗会「トヨタメタポリス」など、今までに無いありとあらゆる販促策を投じている。

 トヨタオートモールもそうした新しい取り組みのひとつ。大型ショッピングセンター内に構える新形態の自動車販売店舗として2000年、岐阜にオープン。その後、横浜、八尾(大阪)に続き、越谷は4店舗目だ。トヨタ系販売店5社(埼玉トヨタ・埼玉トヨペット・トヨタカローラ埼玉・ネッツトヨタ東埼玉・ネッツトヨタ埼玉)は併せて265坪、大規模な新車展示スペースにサービス工場を併設する。

 家族連れや若いカップル、会社帰りと思しきサラリーマンや1人で歩く女性もクルマを目にして立ち止まる。買い物や食事ついでにふらりと立ち寄り、まるで洋服を買う感覚でクルマを衝動買いする人が後を絶たない。

 「普通の路面店とは明らかに客層が違う」と、同モール内の販売店営業マン。普段クルマに関心は薄く、保有していても特に買い替えを気にすることのなかった層が、自然と目に入る何台もの新車を見ているうちに思い立ったように興味を示すというのだ。

 近頃は後々しつこく営業をかけられることも嫌がり、自ら販売店に足を運ぶ人は少ない。比較的クルマ好きな男性は1人で試乗をするが、いざ商談となると「妻と相談しないと…」とそそくさと店を後にしてしまう。

 その点、ショッピングセンター内だと財布の紐を握る女性も一緒なので、即決する場合が多いという。店側は女性の目を引くためカラフルなクルマを置くようにしている。また、価格や燃費を「残価設定プランによる月々の支払額は3,900円、燃費18km/L」などと、車種名よりも大きく派手に表示。これも値段にうるさい女性向けの演出だ。

 トヨタオートモールは「新規顧客は確実に獲得している」と自信を深めている様子。都市部にとどまらず、商機があればこれからも出店を続ける意向だ。果たして新たな販売形態は定着するのだろうか。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 柳澤里佳)