日本振興銀行が新しいビジネスに乗り出している。事業者向けローンの貸出債権をノンバンクから買い取り、貸出残高を伸ばしているのだ。

 いわゆるグレーゾーン金利の撤廃に端を発した過払い金返還請求が、莫大な額に上っているノンバンク業界はまさに青息吐息で、資金繰りに窮している会社も多い。

 そうした状況のなかで、救世主のごとく現れたのが、ミドルリスクとされる中小企業に対し、無担保で積極的に融資している振興銀行だった。

 同行は、中小企業や個人事業主に対する債権をノンバンクから買い取り、その債権を金利を引き下げた新たな貸し出しに置き換えている。

 ノンバンク側には保証を付けたり、過払い金請求があった場合には買い戻したりしなければならないなどの条件が付されているが、「債権を買い取ってくれる金融機関などほかにはなく、非常に助かる」とノンバンク関係者は言う。

 同行関係者によれば、これまでに買い取った債権は600億円規模。ロプロやNISグループなど、事業者ローンを手がける大手のほとんどから買い取っているという。

 ノンバンクは資金調達ができ、利用者も金利が下がるという恩恵を受けるなかで、じつは振興銀行にもメリットがある。それは、営業努力なしに貸出残高を伸ばし、収益を上げられることだ。

 現に、2008年3月期決算で、開業4年目にして初めて経常利益ベースで黒字転換したが、「債権の買い取りがなければ収支トントンの状況で、業績の押し上げに貢献した」と関係者は明かす。

 しかし、「すべての債権を資産査定しているわけではなく、今後、デフォルト率は高まる」「保証を付けているノンバンクに万が一のことがあれば、このビジネスは吹っ飛ぶ」などの指摘も多い。

 振興銀行側は、「短期的なビジネスで、事業の柱とはしない」としているが、貸出残高1000億円程度の同行にとって買い取った債権の規模はいかにも大きく、リスクもまた大きいことは間違いない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)