1月も後半になり、人事異動が話題となるシーズンだ。また、新卒学生の就職活動や社会人の転職活動も活発化している。日本の労働市場には問題点が多いが、徐々に変化しつつあるのも事実だ。賃上げをして優秀な人材を確保できなければ、「人手不足倒産」の憂き目に遭うことになる。中小企業には死活問題であり、今年は中小企業で早期退職実施や、M&A(企業の合併・買収)の重要性が高まることも、労働市場に好循環をもたらす一因になるはずだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
中小企業では「人手不足は死活問題」
わが国の人手不足は深刻さを増している。製造業からサービス飲食・宿泊業まで、ほとんどの業種で人手不足を訴える声が高まっている。人手不足から倒産に追い込まれるケースも目立つ。特に中小企業では「人手不足は死活問題」という指摘を聞くことが多い。
人手を確保するためにも、賃上げの重要性は高まっている。大企業の中には、大卒の初任給を40万円超えの水準まで引き上げるところも出ている。また、役職定年の引き上げなども組み合わせることで人手の確保に奔走している。
ただ、中小企業が大幅な賃上げを毎年実行するハードルは高い。政府の価格転嫁促進策などはそれなりに拡充されているが、賃上げ余地が限られる中小企業にとって人手不足の解決は容易ではない。
一方、人手不足を一つの契機に、わが国の労働市場が徐々に変化しつつあるのも事実だ。これまでの新卒一括採用、終身雇用・年功序列型賃金などの慣行は少しずつ変わりつつある。大企業でも中途採用の割合が増え、労働市場の流動性が高まりつつある。個人にとっても、スキルを高める学び直しの重要性は増している。働く人それぞれの技術や能力が高まれば、企業の実力は高まり生産性の向上も期待できる。
となると政治の役目は、何だろうか。かつて「欧州の病人」と呼ばれたドイツの労働市場改革は参考になるだろう。日本政府も知恵を絞ってほしい。労働市場の流動性は向上し、効率の良い企業を増やすこと。これがなければ日本経済の持続的な成長は見通せない。