フジテレビCM75社が撤退!「SNSで叩かれる」「他社もやめたから…」事なかれスポンサー続出も、サントリーの対応が評価できるワケPhoto:PIXTA, JIJI

タレントの中居正広さんと女性とのトラブルに、フジテレビが関与していたとの報道を巡り、スポンサー企業がフジテレビへのCM出稿を差し止める動きが拡大している。こうした対応は、自社を中心として捉えた危機管理としては正しいだろう。だが、それだけでは十分な対応とは言えない。フジテレビだけの問題ではないだろうし、テレビ局と芸能界、スポンサーの間の「無法地帯」に厳しく切り込んでいくことが必要だ。(エス・ピー・ネットワーク 取締役副社長 首席研究員 芳賀恒人)

フジテレビに「被害者を慮る優しい眼差し」はない
誰に向けた、何のための会見だったのか

 1月17日に開かれたフジテレビの記者会見は、記者会に加盟する新聞・通信社やスポーツ紙に限られ、生中継も動画撮影も禁止された。これでは、「隠ぺい体質」「内輪の論理」「株主や視聴者らの感覚とかけ離れている」「人権擁護の姿勢が極めて脆弱だ」「事の重大さや世の中からどう見られているかの感度が鈍い」などと厳しく批判されても仕方ない(企業統治に詳しい青山学院大学の八田進二名誉教授の発言)。筆者も全く同感だ。

 オンライン署名サイト「Change.org」では、会見のやり直しを求める署名活動が始まっている。発起人は、「このような不公正な記者会見をメディアが自ら行っていたら、政治家や大企業などが記者会見を制限したり、説明を拒んだりしたときに、異議を唱え、是正させていくことができなくなります」などと指摘する。こちらも、そのとおりだ。誰に何を伝えようとしたのか分からない会見、「とりあえずやってみた」だけの会見など、マスコミとして失格だ。

 一方、生中継で女性の特定につながっていたら、取り返しのつかない事態を招いた可能性は確かに否定できない。とはいえ、被害者に対する港浩一・フジテレビ社長の「活躍を祈ります」発言はどうなのか。そこには、「被害者を慮る優しい眼差し」はない。真相を明らかにできない事情と、それとは別だ。同社がマスコミとして報じる側だったら、容赦なく糾弾していただろう。

 フジテレビの徹底的な内向きの姿勢が明らかとなった会見。そこには「負の影響」を断ち切り、「正の影響」を社会にもたらしていこうとする意志もなければ、他者に対する優しさも感じられない。危機管理とはそういうものではない。危機管理の本質から外れた対応が、さらに自らを追い込んでいる。信頼回復に向けて正しいことを、正しいやり方で、正しく行ってほしい。