昨年、印ランバクシーを買収してジェネリック医薬品ビジネスに乗り出した第一三共は、得意とする画期的新薬と合わせて市場を攻める「複眼経営」を掲げた。
だが世界的株安を受けランバクシー株は暴落、第一三共は今期、3540億円の特別損失を計上することになった。一つの「眼」にはスタート前からケチがついた格好だ。
もう一つの「眼」である、画期的新薬で勢いをつけたいところだが、昨年はそれもつまずいた。最も期待されたブロックバスター(大型医薬品)候補「プラスグレル」は、他社の先発薬が約80億ドル(約7300億円)もの売上高を誇るだけに「いずれ1000億円超の売り上げは堅い」「第一三共の命運を握る」と社内外で言われていた。
だが、米食品医薬品局(FDA)の承認審査期限を迎えようとしていた6月、FDAは3ヵ月の審査期間延長を決定。新たな期限の9月になっても結果が発表されず、その理由も明らかにされぬまま時間だけが過ぎていった。
そして、12月31日に受け取ったのが、「2009年2月3日に開催する諮問委員会でプラスグレルの審議を行なう」というFDAからの3度目となる審査期限の通知だった。諮問委員会による審議は正式結果ではないが、なんらかの方向性が示される可能性が高い。
「期限が切られただけでもよかった」と庄田隆社長は周囲に漏らしたという。理由がわからぬまま結果発表が遅れ、一部投資家には失望感も広がっていただけに、それは本音だろう。
第一三共にとって最善のシナリオは、審議で承認の方向性が示され、1ヵ月程度で承認となることだ。だが、昨今FDAは新薬承認に厳しい姿勢を取っている。
欧州では「承認勧告」が出されているため、「非承認」という最悪のシナリオは避けられる見通しだが、追加試験など厳しい条件が付けられれば、承認がずれ込む可能性もある。期待の新薬がどんなスタートを切るか。3度目の期限まで1ヵ月を切った。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)