まず小沢一郎民主党幹事長の不起訴だが、以前論じた通りである(第21回)。「政治的検察」がいつものように無理な行動をしたということだ。
今回は、鳩山政権の農業政策について論じる。「戸別農家への所得補償」とは、農家ごとに農作物の「生産目標数量」を決めて、目標を達成した農家に対して生産費と市場価格の差を政府が直接支払うというものだ。これは、バラマキで財政負担が大きいなど様々な批判がある一方で、農家からは高い評価を受けて、2007年参院選、2009年衆院選で民主党の大勝利をもたらした。
日本の農業政策の問題点は、山下一仁氏の「農業開国論」によれば、国内米消費の減少に対して減反と高関税による米価維持で対応していることだ。減反は食糧安全保障に不可欠な農地を減少させ、高関税の代償としてミニマムアクセス米の輸入が拡大することで食糧自給率が低下し、農業の衰退が加速している。
山下氏は、減反の廃止と主業農家のみに対する所得補償を主張する。その結果、零細な兼業農家は撤退して農地を主業農家に貸し出す。主業農家が大規模化して米作のコストが低下する。コスト競争力強化でアジア市場への米の輸出が拡大できる。
輸出が拡大すれば、平時は外国から農産物を輸入していても、外国からの輸入が途絶えた時は、輸出に回していた分を国内で食べられる。食糧安全保障も実現するという考え方だ。
参院選が終わるまでは
農政の転換は期待できない
これは荒唐無稽の異論ではない。自民党も民主党も「減反廃止」「主業農家への直接支払い」を検討したことがあるからだ。例えば自民党では、農林族と農協の圧力により葬られたが、福田内閣の町村信孝官房長官や麻生内閣の石破茂農水相が、減反見直しや輸出拡大に言及した。
民主党は、2001年参院選で「コメの減反の選択制」「新たな所得政策の対象は専業的農家」と主張し、2003年のマニフェストでも「食糧の安定生産・安定供給を担う農業経営者を対象に、直接支援・直接支払制度を導入」を明記していた。