「まさか……」トランプ再選の衝撃
ハリス敗北宣言も燃え続ける火種
「空前の大接戦」と予想されていた米国大統領選は、共和党のドナルド・トランプ元大統領が総得票数で民主党のカマラ・ハリス副大統領を上回り、当落を決める激戦区もほとんど制して完勝となりました。
ハリス氏も敗北を認め、政権の委譲を確実に行うと宣言しました。前回のトランプ敗戦のときのような騒乱状態は、ひとまず避けられたようです。
が、米国全体が落ち着いたわけではありません。なにしろ首都ワシントンD.C.では、選挙日前からガラスが割れるのを防ぐために木の板で覆うビル工事が増えており、西部の2つの州で郵便投票箱が燃えるなど、あちこちで銃を所持した警官が警備をしている厳戒態勢が続いています。民主党支持者だけでなく共和党の穏健派など「トランプ嫌い」の気持ちは、ハリス氏の敗北宣言だけでは鎮静化していないのです。
それにしても、トランプ圧勝は意外でした。前回のトランプ治世は、軍幹部がロシアに「大統領が核のボタンを押すかもしれない」と直接警告を送るほど無軌道な外交を続け、自らも移民(スロベニアから移住)の妻を持ちながら移民を排斥し、選挙に負けたら暴動を煽るといった、ありえない大統領でした。
今回も、「自分が当選したら、ウクライナ戦争を1日でやめさせる」「不法移民を大量に送還する」「中国にはもっと関税をかけて、米国から収奪するのをやめさせる」「イスラエルにはイランの核施設を攻撃させる」など、物騒な公約を並べ立てていました。
なぜ、米国民は再びトランプを支持したのでしょうか。ブルームバーグとモーニング・コンサルトが共同で行った、大統領選の争点の重要度に関する世論調査を見ると、その理由がはっきりします。
「大統領選で最も重要な争点をひとつ挙げるとしたら何ですか」という問いに対し、この1年では「経済」という回答が常に40%近くを占め、2位は「移民」となっています。ハリス候補の得意分野である「中絶」と「民主主義」は、重要度がそれらよりも低い。つまり、米国民は経済と移民排斥という自分の生活に関わることだけを、民主主義や中絶といった自身の生活を超えた大きな価値観よりも重視しているから、トランプ支持が減らないというわけです。