今年8月5日に起こった日経平均株価の歴史的な大暴落。『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え』の著者で、資産20億円を築いた「日本のバフェット」と呼ばれる藤本茂さん(シゲルさん)はこの日、どう動いたのか。「暴落を怖がってたら投資なんてできへん」というシゲルさんが「暴落時にしないほうがいい」ということとは?(ライター 松田小牧)
戦後の株式市場を
誰よりも体験してきた
88歳のデイトレーダー・シゲルさんは、戦後の株式市場の生き証人と言える。シゲルさんが株式投資を始めたのは1955年。自由民主党が誕生し、高度経済成長が始まったまさにその年のことだった。日本の成長も凋落(ちょうらく)も、相場を通して見つめてきた。
株式投資を始めてから30年はペットショップや雀荘などを経営していたシゲルさんだが、86年に雀荘を売却し、専業投資家に転身。順調に資産額を伸ばしていたところに起きたのが、87年10月のブラックマンデーだった。米ニューヨーク株式市場での大暴落が日本にも波及したこのとき、日経平均は1日で3836円急落した。長いシゲルさんの投資人生の中でも、一番の暴落の記憶だ。
「見る銘柄、見る銘柄ストップ安。買いにもいかれへんし、売ることもできへん。ただ『あー』っと思ってる間に、みるみる株価が下がっていったね」
それでも、その後の日経平均株価の回復は早かった。88年に入ると目ざましい急上昇ぶりを見せ、89年12月には史上最高値(当時)となる3万8915円を付けた。シゲルさんの資産額も一気に10億円に達した。
しかし、バブルは崩壊。築き上げた10億円は、一気に2億円まで減少した。シゲルさんはこの暴落を受け、「株が嫌になったわけではなかったが、しばらくはあんまり身が入らなかったね」と振り返る。
株価が最高値更新の24年
8月5日に起きた大暴落
本格的に株式投資に復活したのは2002年、ネット取引を活用するようになってからのことだ。「対面か電話かしかで買えなかった株がこんなに簡単に買えるとは。おまけに手数料も安い」。バブル期以上に株にのめり込んだ。
日経平均株価が最高値を更新した24年には、資産が20億円に到達した。テレビなどでは「日経平均株価5万円到達も夢ではない」といった言葉も躍った。そんな様子を見たシゲルさんは、「5万円になるかもしれないし、暴落するかも分からん。それは分からんで」と言い続けてきた。
そうしてやってきたのが、8月5日の暴落だ。日経平均株価は4451円安となり、ブラックマンデー時に記録した最大の下げ幅を約37年ぶりに更新した。