民主党政権が取り組むべき最重要の課題の1つとして、年金制度の再構築がある。以下では、日本の公的年金制度にいかなる問題があり、それをどのように再構築すべきかについて考えることとしよう。
一般には、「消えた年金問題」、つまり保険料納付記録の扱いがずさんであったことが、年金制度の最大の問題とされている。たしかにこれは、重大な問題だ。しかし、記録問題は年金問題の本質ではない。本質は、財政構造にある。
これまで、日本の公的年金制度では「財政再計算」がなされていた。これは、人口・経済動向など年金を取り巻く状況を考慮しつつ、5年ごとに将来の見通しを示しながら当面の保険料負担を定める方式だ。
最近では1994年、1999年、2004に再計算が行なわれた。
ところが、この方式に対しては、「財政再計算のたびに負担が増える。これでは将来どこまで保険料負担が増えるかわからない」との批判があった。このため、5年ごとに保険料を見直す方式を変更することを余儀なくされた。
そして、2004(平成16)年の年金改革法において、「保険料水準固定方式」を導入した。これは、最終的な保険料水準をあらかじめ定め、それに向かって保険料を徐々に調整してゆく仕組みだ。ただし、財政状況を検証するため、少なくとも5年に1度は政府により「財政の現況及び見通し(財政検証)」を作成し、公表することとされた。最新の財政検証は、2009年2月23日に公表されている。
当時の政府与党は、2004年年金改革法は給付と負担の見直しに関する抜本的な改革であるとしている。この制度によれば、少子化や高齢化が進んでも、また経済成長が阻害されたとしても、将来、一定の年金給付水準は守ることができるというわけだ。このため、現在の仕組みは、「100年安心年金」と呼ばれることもある。
「保険料水準固定方式」で決めているのは
保険料であって給付ではない
2004年年金改革法で決められた負担と給付の見直しに関する主な内容は、次のようなものだ。