乾杯する手写真はイメージです Photo:PIXTA

費やした時間に対して得られる効果や満足度を意味する言葉「タイパ(タイムパフォーマンス)」の重要性が注目されている。映画を早送りしたり本を要約サイトで読んだりといった「趣味の効率化」よりも、もっと効果的なタイパ……それは「無駄な人付き合いをやめる」ことだと著者は提言する。本稿は、林 望『結局、人生最後に残る趣味は何か』(草思社)の一部を抜粋・編集したものです。

惰性の人づきあいは
時間を浪費する“元凶”

 今は「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉も使われるようになっていて、映画を早送りで視聴したり、本を要約サイトで読んだりする人も増えているようです。

 そうやって短時間で情報を得ることで、時間を有効に使った気になりがちですが、私はこういう「なんでも即席」式のやりかたは、こと趣味や勉強に関してはよろしくない思案だと思っています。

 時間を節約するための、もっとも正しい方法は「やらなくてもいいことをやめる」ということです。

 本当に短縮すべきは、飲み会や形式的会議などの非生産的な時間です。そういう時間を削って、趣味は丁寧にゆっくりじっくりと、考え考えしつつ取り組むということが、本当に有意義な時間の使い方だと言わなくてはなりません。

 人生において、時間を無駄にする一番の元凶は、「惰性による人づきあい」です。「人づきあいの悪い奴だ」といわれるのを恐れて、ついつい「あんな会合は無意味だよなあ」と思いながらも、惰性でつきあう、そういうことをしていると、大切な人生の時間がどんどん無駄に使われてしまい、結果的に時間はいくらあっても足りないということになります。

 しかし、惰性による人づきあいよりも趣味の自己実現のほうが自分にとって大切だと思えば、別に誘いを断っても平気でいられるはずです。

 人生の時間は限られています。つまらないことに時間を使わず、自分のやりたいことに一生懸命使うのが、ほんとうのほんとうは、良い時間の使い方であるにちがいないのです。

 私はもともと酒を飲まないので、酒席の類には一切参加しませんし、パーティや同窓会、懇親会なども基本的にすべて欠席します。そもそも世の中の大半の会議は無駄だと思っているので、「会議」と聞くだけで真っ先にお断りしています。

 藝大に勤務していた時代の後半は、ほとんど教授会にも行かずに自分の時間を確保していました。ですから、あちこちで変人扱いされているかもしれませんが、時間の大切さを思えば仕方のないことです。