「退職した社員に内部情報が持ち出されてしまった」
「退職前に有給休暇を請求され、引継ぎが満足にできなかった」
労使間でのトラブルが最も多い時期は社員の退職時です。労使双方にとって円満な退職が理想ですが、退職時においては社員の会社に対する忠誠心は低くなっている場合も多く、会社側の要求が通りづらくなります。それにより、会社側も退職する社員に対する関心が薄れていきます。
総務省が公表している労働力調査詳細結果によると、毎年転職者数は増加傾向にあり、年間で約350万人程です。これは正規労働者の約10%にもなります。単純に言えば、1年間で正社員の10%は入れ替わることになります。
今回は、雇用の流動化が激しい時代の退職時に関するルール作成のポイントをお話しします。
【ポイント1】
退職時の引継ぎルールを明確化する
退職時に最も問題になるのが引継ぎです。「立つ鳥跡を濁さず」という気持ちをもって引継ぎを行なわせるためのルールが必要です。
まず、退職の申し出日は、役職や勤続年数に応じ、退職予定日の少なくとも1ヵ月から3ヵ月前とします。
民法627条は、期間の定めのない雇用契約の場合、自己都合退職を希望すればいつでも退職を申し出ることができ、その日から14日経過すれば、労働契約は終了すると定めています。
しかし、わずか14日間では適切な引継ぎは難しいでしょう。訓示的な意味合いとして、あらかじめ余裕をもって退職の申し出をすることをルールとして決めておきましょう。
そして、引継ぎ義務があることを就業規則に明記します。適切に引継ぎをしない場合は懲戒処分を行なうことがある旨、そして場合によっては退職金を減額支給するともある旨を記載します。
「適切な引継ぎ」といっても、その程度には労使間で温度差がある場合もあります。引継ぎの完了はあくまで会社側が決定するルールにすることが大事です。