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裁量労働制を導入している企業に転職した社員。「自分のペースで自由に働ける」と思っていたが、上司は「裁量労働制とはいえ、出社時刻が遅すぎる」といちいち嫌味を言ってくる。「裁量労働制でも出社時刻は守れ」「裁量労働制なら出社・退社の時間も自由なはずでは?」上司と社員、どちらの言い分が正しいのだろうか。両者の言い分について、社労士・カタリーナの見解は……。

<登場人物>

花崎(32歳):ゲーム用ソフトウェアの開発に携わる男性社員
水沼(45歳):花崎の上司で、情報開発本部の男性マネージャー

裁量労働制なのに出社時刻に嫌味を言う上司

 ある日、出社してきた花崎を見るやいなや、上司である水沼が嫌味っぽく声をかけてきた。

水沼「花崎君、今日も随分とゆとり出社だね。もうランチタイムじゃないか」

花崎「裁量労働制ですから、出社時間は自由ですよね?」

水沼「でも、こういつも勝手な時間に出勤したり帰られたりすると、職場のチームワークが乱れるんだよねぇ」

花崎「業務のやり方や時間配分は、自分で決められるはずですよね?最初のうちは仕方ないと思っていましたが、もう入社して半年ですよ。ちょっと細かすぎませんか?」

水沼「いや、君たちをマネジメントするのが私の仕事だからね。もう少しうちのやり方に慣れてもらわないと……」

 そのとき、花崎の頭の中で、我慢していた糸が切れるような音がした。

花崎「自分はこの仕事のプロフェッショナルだと思っています。裁量労働制なら自分のペースで自由に働けると思ったのに、裁量のない裁量労働制なんてありえないですよ!」

水沼「十分に裁量は与えているだろう。裁量労働制といっても、毎日重役出勤では困るんだよ。君が身勝手なだけじゃないか?」

花崎「身勝手?こっちは一生懸命やっていますよ。みなし労働時間以上に働いているのに、これじゃ『定額働かせ放題』じゃないですか!」

水沼「ずいぶんな言い様じゃないか。うちの社風が合わないようなら、別のところへ行ったらどうだ?」

花崎「は?水沼さんこそ、管理職として失格じゃないですか?」

水沼「な、なんだと!?」

 2人の泥仕合を見かねて、職場のメンバーが仲裁に入った。

 しかし、水沼の怒りはどうにも収まらない。部下からこんな言われ方をしたのも初めてだった。自分の正当性を明らかにするためにも、社外の専門家である社労士のカタリーナに相談してみることにした。カタリーナは、歯に衣着せぬ物言いで相談者に愛のムチを入れる、ちょっと風変わりな社労士だ。