中絶手術前夜、娘から妊娠を告げられた日から父親の戦いが始まった(写真はイメージで本文と関係ありません)

「思いがけず妊娠してしまった(させてしまった)。どうしよう…」

 そんなふうに私のところに相談しに来る男女は、年がら年中、存在するのですが、では1年のなかで一番多いのは何月でしょうか?相談者の大半は「ヤッたとき」ではなく「デキたと分かったとき」にやってくるというのがヒント。そう、正解は9、10月です。

 例えば、暑さの厳しい7、8月。男女ともに心も体も開放的になり、ちょっとハメを外し、体の関係を結んでしまった……そんな夏休みのアバンチュール、若気の至りの夜遊び、そして一夜限りの関係などは『夏の風物詩』。

 一方、「まぁ大丈夫だろう」と甘く考えたり、「もっと気持ち良くなりたい」と安易に思ったり、久々すぎてタイミングを逸したりして、避妊しないまま射精して(射精させ)、9、10月に孕んだ(孕ませた)ことに気づくのは『秋の季節もの』。種を植えてから花が咲くまでと同じように「時間差」が生じるのですが、子どもを産むのかあきらめるのか……どちらを選ぶのかは時間との勝負です。

 原則として妊娠3ヵ月以内に決断しなければなりませんが、今回の相談者は妊娠中の女性ではなく、その父親。未成年の娘の妊娠が発覚したけれど、相手の男に結婚する気がない、お金を払おうとしない、逃げようとしている。そんなふうに娘が「やり逃げ」のような形で被害に遭った場合、父親の立場で何ができるでしょうか?今回紹介する高野信吾さん(仮名。46歳)も娘さんから妊娠の事実を何の前触れもなく告げられ、弱ってしまった父親の1人です。

19歳娘が中絶費用を工面できず
手術前夜に告げられた妊娠

「許せません!娘は今でも中絶の後遺症に悩まされているのに!!」

 信吾さんが激怒するのも無理ないことです。娘さんが中絶の手術を受けてから2週間。胎児を失った喪失感や罪悪感のせいか、術後の経過は芳しくなく、夜も眠れない、食事も喉を通らず、不眠症、摂食障害などの症状は日増しに悪化するばかりだったからです。娘さんの症状はどこまで悪化するのか、いつまで続くのかも分からない絶望的な毎日を送ることを強いられているので、信吾さんが「中絶のせいで娘がボロボロになった」と手術と後遺症との間に因果関係があると決め付けても不思議ではないでしょう。