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トヨタ自動車は4月1日付でCFO(最高財務責任者)である近健太氏を、社長に昇格すると発表した。豊田章男会長は、「トヨタ自動車にとって伝説的な人物」の名前を挙げて、近氏に期待をかけている。近氏に求められている姿とはどんなものなのか。(イトモス研究所所長 小倉健一)
伝説的経営者・石田退三の魅力
石田退三という名前を聞いたことがあるだろうか。自動車メーカー「トヨタ自動車」を世界的な企業へと押し上げた、伝説的な経営者で「トヨタ自動車の大番頭」とも言われる。
2026年2月、トヨタの豊田章男会長は、次期社長となる近健太氏に対して「石田退三さんのような役割を期待している」と語りかけた。近氏は財務や経理の分野で長く活躍してきた人物である。
なぜ今、豊田会長は過去の偉大な経営者の名前を挙げて、新しい社長に想いを託したのだろうか。時計の針を過去に戻し、石田氏の魅力と現代に受け継がれる熱い想いについて、一つずつ丁寧にお伝えしたい。
石田氏は、1888年に愛知県の貧しい農家に生まれた。幼い頃に父親を亡くし、家計は非常に苦しかった。勉強を続けたくても、進学をあきらめざるを得ない状況であった。
しかし、石田氏は決して運命を恨むことはなかった。代用教員として働いたり、名古屋の西洋家具屋で丁稚奉公という厳しい修業を経験したりしながら、商売の基礎を体で覚えていったのである。
やがて、トヨタグループの創設者である豊田佐吉氏と運命的な出会いを果たす。上海で働いていた時、佐吉氏から直接声をかけられたのだ。佐吉氏は石田氏に対して「商売人ならお金を儲けてくれ。そして、恵まれない研究家を助けてくれ」と力強く語ったという。
新しい技術を生み出すには莫大なお金がかかる。だからこそ、商売の才能がある石田氏に、利益を出して研究者を守ってほしいと頼んだのである。
石田氏は佐吉の言葉を生涯の目標とし、利益を出して技術者の夢を支えることに全力を尽くす決意を固めた。







