こうした状況を捉え、ソウル大学国際大学院長の朴喆熙(パク・チョルヒ)教授は、リーダーシップ不在の韓国外交が「複合危機」に直面していると指摘している。

「周辺の大国はトランプ氏、安倍晋三首相、習近平国家主席、プーチン大統領と強力なリーダーたちが『強い国の復活』を叫んでいるのに、韓国は政治的混乱と分裂の中で自分の首を絞めるようなことばかりしている。米国による保障がなければ、韓国の安保は揺らぐ。それこそがTHAADの配備を先送りできない理由だ。圧力に負けて配備を先送りすれば、この先、中国による圧力は逆に強くなるばかりであろう。北朝鮮の『槍』は鋭くなる一方なのに、韓国は自ら『盾』を下ろすことになるのだ。中国は北朝鮮を動かす『てこ』になるかもしれない。だが、韓国の安全を保障してくれる国ではない。韓米日の協力は、北朝鮮核問題の対応において欠かせない」

 まさに、私が現在の韓国について抱いている懸念を鋭く指摘している。

 問題は、朴教授の指摘する正論が、現在の韓国における国内政治の雰囲気では正しく反映されていない点である。ただ、心強く思うのは、韓国でポピュリズムが蔓延する中、韓国の主要メディアが寄稿とはいえ、こうした正論を掲載していることである。これまでのメディアであれば、読者やポピュリズムに迎合し、読者受けのする記事のみ掲載してきたが、そうした正論がまかり通るようになったことは評価してよいのではないか。

日韓の対立は
米国との協力の障害要因に

 朴教授は日韓関係においても勇気のある指摘を行っている。

「慰安婦問題を巡る2015年末の韓日合意は、両国の葛藤を解消しようとするものだった。合意内容に不満を持つ人はいるかもしれないが、これを無効にして再交渉しようという主張は、一部の国民には受け入れられても現実的ではない。外交には相手がいる。状況が変わったからと交渉のやり直しを求めれば、『韓国は必要ならゴールポストを動かす』という日本の右翼の論理を私たち自ら証明することになる。韓国の国際的信用は低下し、国際社会の非難は韓国に向かう公算が大きい」

 オバマ政権の頃より、米国は頻繁に日韓関係の改善を求めてきた。中国や北朝鮮が日米韓の離間を図る中、慰安婦問題で日韓が対峙することは、日米韓協力の根幹を揺るがすことになるからである。

 朴大統領の弾劾決議以降、韓国の政治活動家団体「韓国挺身隊問題対策協議会」は慰安婦問題に対する合意を反故にしようとその活動を強化させてきた。それが、釜山の日本総領事館前の慰安婦を象徴する少女像の設置になったのである。