女性の役職へのチャレンジが普通になった

 カルビーの取り組みで評価されているのは、象徴的な女性リーダーではなく、各部門(ライン)で実際に数字に責任等を持って奮闘している女性リーダーが存在すること。また経営トップを中心に、ダイバーシティ推進・働き方改革に関する積極的な情報発信を継続的に実施していることにある。その中でも“働き方改革”の先進的な取り組みが目立つ。

全国各地で開催されるダイバーシティーフォーラム

 同社では10年の本社移転を機に、本社全部門を対象にオフィスに固定席を持たないフリーアドレス制を導入した。毎日「ダーツ」というシステムでランダムに席が割り振られ、ワークスタイルや業務内容に応じて3タイプの席を選択できる。他部署の社員と自然にコミュニケーションができるため、新たな仕事のアイデアや部門の壁を越えたコラボレーションが生み出され、効率的に成果を出す働き方が実現する。

 11年からは営業職の直行直帰スタイルが定着し、モバイルワークも進んでいる。さらに14年には在宅勤務制度、15年は新たな両立支援制度も導入された。同社では、ワーク・ライフ・バランスをあえて“ライフ・ワーク・バランス”と呼び、生活を優先した多彩な制度改革を実施、男女共に働きやすいだけでなく、働きがいのある環境を構築している。

 ダイバーシティへの取り組みで社内の雰囲気はどう変化したのか。ダイバーシティ委員会の初代委員長を務めた後藤綾子執行委員はこう説明する。

カルビー
後藤綾子 執行役員

 「社内では、女性役職者がいることは普通になってきました。男性も女性も、一度役職者になっても成果が出なければ降りることもあり、再チャレンジすることもできる。さまざまなタイプの女性が管理職を経験することで、後に続く人材も“あの人がなれるのなら私も”と、オファーが来ればまず受けてやってみるという好循環が生まれています」

 女性活躍が推進される中で、男性の意識も変革しつつある。男性従業員も育児休暇を積極的に利用(取得率69.1%)し、年に一度のダイバーシティーフォーラムには男性の参加者も多く、女性管理職に対するメンター制度に男性役員が積極的に関与するようになった。女性管理職比率の向上に比例して、同社の業績も好調に推移。7年連続で増収増益を達成している。カルビーが目指すのは、多様な人材が活躍するダイバーシティ推進で日本一の企業になること。男女の区別なく活躍できる風土は、すでに醸成されている。