大和証券
鈴木茂晴 代表取締役会長

「女性活躍の一番の鍵は時間」と考え、19時前退社を励行する大和証券。女性社員の積極的な登用と、両立支援制度の拡充、ワーク・ライフ・バランスの推進で、企業価値も向上し、「女性が輝く先進企業表彰」内閣府特命担当大臣表彰を受賞した。

 大和証券が女性活躍推進を本格的に始めたのは平成17年。鈴木茂晴会長はその理由をこう語る。「平成16年に社長に就任し、全国の支店を回ると優秀な女性が多くいることに気付きました。しかし話を聞くと、仕事を続けたくても、結婚や出産、配偶者の転勤といったライフイベントで会社を辞めるケースが多くある。数年かけて教育し、知識やスキルを蓄積して一人前になった頃に仕事を辞めてしまうのは、本人のキャリアにとっても、会社にとっても、大きな損失。女性社員に長く働き続けてもらうためにはどうしたら良いかを考え始めたことが、当社の女性活躍推進の出発点になったのです」。

 ここ十数年の間に証券会社の業務は、顧客の資産形成を総合的にコンサルティングするサービスへと変化した。そのビジネスモデルには、女性特有のきめ細やかで丁寧な対応が向いている。女性の活躍を推進しなければ、人材という経営資源の損失になるのだ。

女性活躍の一番の鍵は
「時間を自分でコントロールできる」こと

 取り組みの軸となったのは、まず「時間管理」だった。長時間労働が前提の働き方では、女性が働き続けることは難しい。育児の大部分は女性が担っており、仕事と育児、仕事とプライベートを両立させて働き続けるためには、時間を自分でコントロールできることが大切になる。具体的には、平成19年から全社的に「19時前退社」の励行をスタートした。

 「導入当初は、役員や支店長から反対の声が多く上がりましたが、経営層から丁寧に説明を行い、必ず実践するように指示し、毎日報告を求めました。19時前退社を始めてから、自己研さんに励む社員が増え、現在CFPの取得者数は金融機関でNo.1になっています。労働時間を削減することで業務効率が上がり、自らの能力を高められ、それがお客さまへのサービスの質が高まることにつながり、結果的に会社にとってもプラスになったのです」(鈴木会長)

※CFP(ファイナンシャル・プランナーの上級資格)

 

 平成26年からは、管理職手前の女性社員を対象に「女性キャリア支援研修(Daiwa Woman’s Forum)」を実施。また、育児休暇中の社員も昇格対象になり、男性中心とされていた部署へ積極的に登用するようになった。その結果、女性管理職数は平成17年度の77人から、平成28年度には296人へと大幅に増加した。

 平成21年には証券業界では初めて、生え抜きの女性役員4人を同時に登用した。1人だけを象徴的に抜擢するのではなく複数名を登用すれば、横のつながりができ悩みも共有できる。ロールモデルが増えることで、女性も自らのキャリアを描きやすくなった。

 「女性活躍支援の取り組みは、決して女性優遇ではなく、必要な時期に適切な配慮をして働き続けてもらうということ。つまり人材の価値を公平に見るということです。女性でも男性でも、優秀な人材はしかるべき役職に登用して能力を発揮してもらう。それが、人材の力を最大限に引き出して、企業価値を高めることにつながると考えています」(鈴木会長)

働き方やキャリアイメージをより描きやすくするため、女性キャリア支援研修(Daiwa Woman’s Forum)」を実施