「女性が輝く先進企業表彰」で内閣府特命担当大臣表彰を受賞したユーシステム。ITを活用して業務の見える化を実施、アクションプランを作成して、習慣化した長時間労働を解消、新3K産業といわれる業界の常識をくつがえす挑戦を続けている。
「中小企業は男性社員の採用は難しいが、優秀な女性を採用することはできます。しかし当社はIT産業という業種柄、長時間残業が常態化していて、働きやすい職場とは言い難い状況でした。女性が結婚した後も仕事を継続し、活躍できる職場を目指すため、女性活躍推進に向けた改革を行ったのです」
佐伯里香社長
そう語るのは、兵庫県神戸市にあるユーシステムの佐伯里香社長だ。従業員19人と小規模ながら、システム受託開発、HP制作、IT活用支援、セキュリティ研修などの業務をこなす。女性従業員比率は約5割、残業時間の削減は人材を確保する上でも必須の課題だった。
クラウド上でプロジェクトを管理、
残業時間ゼロを目指す
改革で取り組んだのは、まずIT導入による徹底した業務効率化だった。残業は常態化しており、注意するだけではその習慣は変わらない。そこでITを活用して業務の見える化を実施、クラウド上でプロジェクトを管理して在宅勤務可能な環境を構築した。さらに成果目標や行動目標を数値化し、プロセスを明確にしたアクションプランを実行。残業の習慣を変えるために、残業の申告制や定時退社日を設定して意識改革を行った。
同時に、女性社員を中心に家庭の事情に合わせた柔軟な働き方ができる制度、フレックスタイムや半休、育児休業や育児短時間勤務、傷病休暇などの制度を整えた。在宅勤務制度は、子育て中の女性に限定せず、そのときの業務や状況に応じて認めることにした。例えば外出先から会社に戻るより、帰宅して作業する方が効率が良い場合などだ。
さらにチームで情報を共有し、担当者が休んでも対応できる体制を整えたことで、女性社員を中心に柔軟な働き方が可能になった。
「残業が深夜までおよぶと、仕事の質が低下するばかりでなく、集中力がなくなりミスも増えます。仕事は時間があればあるほどダラダラやってしまい、生産性が上がりません。また以前は、他のスタッフと情報共有する習慣が少なく、できる人に仕事が集中する傾向がありました。そこで、作業の無駄を省いて情報を共有、残業する習慣を変えることで、早く帰宅できるようになり、いわゆる“生活残業”がなくなったのです」(佐伯社長)
その結果、2015年度には、残業時間が月平均で16.6時間まで削減できた。業務の無駄がなくなったことで利益率も高まった。将来の目標は「残業ゼロ」だ。
佐伯社長はこう語る。「当社の取り組みが成果を上げたのは、社員全員が使える勤怠管理システムを導入したこと、女性が輝く先進企業表彰へのチャレンジを目標にしてモチベーションを保ったことにあります。しかしながら最も重要なことは、これをやり抜こうとする覚悟や熱意が経営者にあることだと思います」。