2月の終わりに米国のニューヨークとワシントンを回ってきた。日本で予想していた以上に、ドナルド・トランプ米大統領をめぐる米国内の分裂は激しい状態にあった。
トランプ氏の支持率は就任直後としては異例の低さであり、特に民主党支持者の間では1桁しかない。しかし、共和党支持者の間での大統領としての支持率は、やや落ちてきたとはいえまだ高い。ワシントンにあるトランプ・インターナショナル・ホテルをのぞいてみたところ、ケーキセットは55ドル(約6200円)と高価だが、広いラウンジは楽しげに飲食する人々で大賑わいだった(そのほとんどが白人)。
一方、ホワイトハウスとメディアの対立は悪循環を起こしながら、ますますヒートアップしている。米CNNテレビは、番組とコマーシャルの合間に「CNN、報道において最も信頼ある名前」と流し続け、米紙「ワシントン・ポスト」は、ウェブサイトの社名の下に「暗闇の中で民主主義は死ぬ」というスローガンを掲載し続けている。
また、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は2月26日、自社の全面意見広告を掲載。1枚目には「真実。それは今、かつてないほど重要だ」とだけ記載。そして、2枚目には「真実が攻撃されている」といった、「真実」という言葉を含んだ文章を19行書き連ねた。
同日の社説で「ニューヨーク・タイムズ」は、トランプ氏がメディアを「人民の敵」と罵倒していることに言及。そして、その言葉は、ヨシフ・スターリンやニキータ・フルシチョフが旧ソビエト連邦の指導者として頻繁に使っていたと指摘した。彼らは政治的敵対勢力にそうしたレッテルを貼ってから粛清を始める傾向があった。
実は、フルシチョフのひ孫が現在ニューヨークで国際政治学の教授として大学に勤めている。彼女は、米国で「人民の敵」という言葉が聞こえてきたことにショックを受けたという。