目の前の「現実と変化」を「言語化」する
前田 そうですね。つまり、現場現物に触れて、そこで感じたことを「言語化」するプロセスが重要ということですね?
野坂 そうです。「言語化する」とは考えることです。「言語化」しようとするから、人間は考えると言ってもいいでしょう。そして、僕が社員に常々言っているのは、「変化を言語化しなさい」ということです。
前田 変化、ですか?
野坂 ええ。たとえば、5歳になる自分の子どもがぐずっているとします。原因を聞いても泣くだけで答えない。病気で体調が悪いのか、友だちと喧嘩したのか、ただなんとなく機嫌が悪いだけなのかわからない。だから、何をしてやればいいのかがわからない。
こういうときには、子どもの微細な変化に注目すべきです。体温を図ってみたら熱があるとすぐにわかるかもしれない。好きなお菓子を上げると、途端に笑顔になるかもしれない。いろんなアクションを起こして、子どもの変化を見る。変化の仕方を観察すれば、必ず原因に辿り着けるはずなんです。そして、それを言語化して家族やお医者さん、場合によっては学校の先生に相談すれば、解決策が見えてくるはずです。
前田 なるほど。
野坂 仕事において、僕らの周りで起こっていることのほとんどは、この「子どもがぐずっている状態」なんですよね。当事者は、本当の原因を言語化できないから悩んでいる。それを、「なんでだろう?」とじっと観察して原因を探るのが「見る力」です。そのためには、相手の変化に着目する。そして、それを言語化することで、原因を特定し、関係者の協力を得ながら解決策を導いていくわけです。
前田 たしかに、課題の共有には「言語化する力」が欠かせません。
野坂 そう。そして、その「言語化する力」とはプレゼン力にほかならない。だから、「プレゼンで相手を動かす」というゴールを与えることで、逆算的に「見る力」を鍛えることができると、私は考えているんです。
(第2回に続く)