孫正義氏の「一発OK」を次々に取り付けた伝説的プレゼンテーターで、ベストセラー『社内プレゼンの資料作成術』著者の前田鎌利氏。彼が講師を務める「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」の開催まで、いよいよ1ヵ月を切った。ソフトバンクを退社し、独立した今でもなお、プレゼンテーションの研鑽をやまない前田氏。彼は日々、自らのプレゼン術をどのように磨いているのか。本日はその「勉強法」の一端を公開する。一瞬で聞き手をつかみ、興味を持たせ続け、「100%一発説得」を勝ち取るために、前田氏がプレゼンの参考にしているものとは?(構成:前田浩弥)
社外プレゼン1枚目のスライドは「映画の予告編」
「その匠、千年先を見通す」。
これは、テレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)で、宮大工・菊池恭二氏が紹介された回の冒頭、画面に表示されたテロップです。真っ黒の画面のど真ん中に、11個の文字を白文字で表示。きわめてシンプルでありながら、力強いメッセージで、インパクトがある。さながら映画の予告編のようで、視聴者はぐっと引き込まれます。
「視聴者を惹きつける」効果だけではありません。
さらにこの1文には、「視聴者を案内する」効果もあります。
というのは、「その匠、千年先を見通す」というメッセージを視聴者に認識させることで、その後、画面にいきなり五重塔が映っても、視聴者は「宮大工の菊池さんがつくったものなのだろう」と想像したり、「今度は菊池さん本人が画面に出てくるだろう」と心の準備をしたりできるからです。視聴者が番組の流れを受け取りやすくなる効果もあるのです。
私は、これまでソフトバンクをはじめ通信事業会社で数々の社外に向けたプレゼンテーションを行ってきました。いかに、効果的にお客様にメッセージを伝えるか?これが、私の仕事の中核的な部分だったのです。だから、そのノウハウを身につけるために、「どこかにヒントはないか?」と常にアンテナを張ってきました。
そして、もっとも多くの学びを得たもののひとつがテレビ番組でした。特に、『プロフェッショナル 仕事の流儀』をはじめ、『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』(ともにテレビ東京)など、ビジネス系の情報番組は、番組冒頭で視聴者を惹きつけるテロップのつけ方、いわば「つかみ」がとても上手。どのような「つかみ」をすれば、視聴者が1時間の番組を最後までみてくれるのかを、映像のプロフェショナルたちが真剣に考えがえているのでしょう。参考にならないわけがありません。
「つかみ」は、社外プレゼンでも強く求められることです。
11月2日に開催する「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」でも詳しくお伝えしますが、社外プレゼンは「つかみ」が命といっても過言ではありません。プレゼンの相手は利害関係を異にする人々ですし、そもそもプレゼンを聞く義務もありません。だから、プレゼン冒頭で興味を惹きつけることができなければ、その先を聞いてはもらえません。まぁ、「聞くふり」はしてくれるかもしれませんが、100%結果は出ません。プレゼンが終わったら、「お疲れ様でした」で終わりなのです。
だから、プレゼン資料の1枚目の「つかみスライド」でいかに相手を惹きつけるかが最大の勝負どころです。そして、そのヒントはビジネス系の情報番組で学ぶことができるのです。
たとえば、これは『社外プレゼンの資料作成術』で詳しくご紹介したものですが、私はよくこんな「つかみスライド」をつくっています。
これは、家事代行サービスを、主な当事者である主婦向けにPRするプレゼン資料の「つかみ」部分です。私は、ビジネス・プレゼンで有効な「つかみ」は、「数字×質問×写真」だと考えています。
最初に「2」という数字だけを見せる。これは、先ほどの『プロフェッショナルの流儀』のように、黒地に白文字でインパクトを出します。そして、「これ、何の数字だと思いますか?」と問いかけるのです。
質問をされると誰もが考え始めます。それによって、「自分ゴト」にしてもらいやすくなるわけです。そのうえで、2枚目のスライドで「生涯洗濯時間2年」と種明かしします。
そして、3枚目のビジュアルを見せながら、「洗濯ってツライですよね?そのツライ洗濯に2年間。長いですよね?」などと語りかけると、多くの主婦の方は「そうそう……」と共感してくれるというわけです。
これなども、私なりにテレビ番組で学んだノウハウを活用したものなのです。