「自動車産業は新たな転機を迎えている。米トランプ大統領の就任に始まり、世界はこれまでにないスピードと大きな変化を示す激動の時代にある。トヨタは未来のために今を変える覚悟が必要。今後、目指すべきは既存の枠にとらわれない『未来のモビリティ社会』の実現だ」(4月3日の新入社員入社式での豊田章男社長の挨拶)と、トヨタ変革への強い意志を示している。

 豊田章男社長は、特に「仕事の進め方変革」に大きな力を入れている。その背景には、トヨタという会社の規模拡大に伴い「顕在化してきた2つの大きな課題を解決しなければ、持続的な成長はない」との危機意識がある。

 その一つは、従来の常識を覆す大きな変化に直面する中で「現地現物」で「即断・即決・即実行」できるリーダーを数多く育成していくことだ。もう一つは、機能間の調整に時間を費やす時間を減らし「もっといいクルマづくり」を柱に据えた仕事の進め方を確立していくことである。

豊田章男社長の意思
「社内カンパニー」

 豊田章男社長の意思が明確に方向づけられたのが「社内カンパニー」である。トヨタは2016年4月から社内カンパニーを軸とする新体制に移行。豊田章男社長が標榜する「もっといいクルマづくり」と「人材育成」、そして「仕事の進め方変革」へ大きく舵を切ったのである。カンパニー制移行から2年目を迎えて、トヨタはさらにこれを促進させるため、この4月から「GAZOOレーシングカンパニー」も新設するなどの組織改正も実施した。

 豊田章男社長がカンパニー制導入の前提としての体制変更をスタートさせたのは、2011年3月にさかのぼる。この時期に「トヨタグローバルビジョン」を策定、発表するとともにこの実現に向けて取締役のスリム化、地域主体経営などマネジメントの仕組みを変更した。

 創業家出身の豊田章男社長の就任が2009年6月だったが、前年の2008年秋にはリーマンショックによる世界的な大幅な販売減退でトヨタも赤字転落。さらに一連のリコール問題で米公聴会での章男社長の「涙の会見」など、まさに「嵐の中の船出」だった。社長就任直後の経営問題の反省からトヨタがどのような企業でありたいか、「今後あるべき姿」を明確化したものが「トヨタグローバルビジョン」だった。

 2013年3月には、トヨタの持続的な成長に向けて「真の競争力強化へ仕事の仕方と意思決定の仕組み」を見直すため、「ビジネスユニット」の新体制を発表した。ビジネスユニットは、事業・収益責任の明確化と意思決定の迅速化へ自動車事業を4つのビジネスユニットの体制に変更したものだ。