影響力のある発言が他の会員の購買活動につながる
――クオンが行うコミュニティ・データマイニング(コミュニティに蓄積された行動データを分析しファン化のメカニズムを解明すること)の結果が今年6月に出るそうですが、どのようなことを期待していますか。
山西 「Newの森」内での関与度が高くなればなるほど購買行動に結びつく、という関係性を、データという数値で見たいですね。ROI(投資対効果)まで踏み込まなくても、ステージ1~4まである関与度のうち、最も関与度の高いステージ4のお客さまが、どのような購買行動をとっているのか、ステージ1のお客さまとはどう違うのか、というところに興味を持っています。
吉原 「Newの森」の特徴は、会員の発言(コメント)が購買に結びついたり、情報共有に寄与している点にあります。他のコミュニティでは「拍手」をしたり、閲覧することが購買に効いているケースもありますが、「Newの森」では、特に発言が購買に効いていることがわかっています。
山田 もう一つの特徴は、会員が立てるトピックの数が他のコミュニティに比べて圧倒的に多いことです。
コミュニティ・データマイニングでは、大量のVOC(Voice Of Customer)から、会員が特に影響を受けたVOCを特定することができます。このVOCをVOI(Voice Of Influence=影響力のある声)と呼んでいるのですが、ユーザーが立てたトピックも、それに対するユーザーの返事もVOIになっていることがわかってきました。盛り上がっているコミュニティだからからこその現象でしょう。
キャンペーン結果をマーケティングに活かす
――「おいしい低糖質プリン」ではモニターキャンペーンを行いました。どのような成果が得られたのですか。
山川 「Newの森」で行うモニターキャンペーンは3回目になります。過去2回は、おなかの調子を整えるラクチュロースの入った「毎朝爽快」、アロエベラから発見した美容食品成分「アロエステロール」を配合したヨーグルト「アロエステ ヨーグルトドリンク」が対象でした。
3回目が低糖質&低カロリーのプリン「おいしい低糖質プリン」です。これまで低糖質商品は、消費者に「味を犠牲にしている」と思われてきました。しかし「おいしい低糖質プリン」はパティシエに監修を頼むなどおいしさにこだわり、おいしいという自信もあったため、事業部から「Newの森」の中でモニターキャンペーンを実施して欲しいという依頼がありました。
応募件数は前2回の3倍の800件に達し、まず低糖質商品に対する関心の高さがうかがえました。モニターの感想も「誰と食べた」というシーンの説明から始まって、卵感、カラメル、テクスチャーまで多岐にわたり、事業部へ貴重なデータをフィードバックすることができました。また糖質ダイエット中の夫に勧めたら「いいものを教えてくれてありがとう」と喜ばれたとか、糖尿病を心配する父親に食べてもらったとか、周囲への推奨行動も起こっていました。
――「濃密ギリシャヨーグルト パルテノ」のマーケティングにも使われていますね。
木下 クオンさんから「AAA(育成型自動学習広告)」(クオンの特許技術)を使った新しいご提案をいただきました。簡単に言えばコミュニティ内のVOIを活用して、コミュニケーションに役立てようという提案です。
「パルテノ」は成長段階にある商品のため、新規顧客もいるし、既存顧客もいることから、さまざまな声を聞くことができると考えたのです。「拍手」が多く付いたコメントをVOIとして分析した結果、開発に3年かけたというパルテノの「こだわりに関する情報」と、3倍濃縮製法を象徴的に表現した「逆さスプーン(成分が濃縮されているため、スプーンを逆さにしてもヨーグルトが落下しない)が候補として挙がりました。
私たちの事前の予想では、新規顧客は逆さスプーンに引かれ、既存顧客はこだわりに関する情報に興味を持つのではないかということでした。ところが実際は逆で、新規顧客は「どのような商品なのだろう?」とこだわりに関する情報を読み、既存顧客はCMで見た逆さスプーンに挑戦したくなることがわかりました。この結果は事業部のマーケティング担当者にも伝え、後々の施策に役立てています。
吉原 AAAがきっかけとなって新たにコミュニティに参加されたお客さまの、森永乳業に対する意識変化、態度変容がどうであったかも、実購買データと掛け合わせて分析しています。会員になる前と後の数ヶ月間を分析すると、数値上は「パルテノ」の購買に影響を与え、森永乳業ファンになっていただいたという結果が現れています。今後は調査期間を1年に延ばし、分析結果の精度を上げていく予定です。
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