6月23日、インターネット上の消費者コミュニティについての大規模なセミナーが開催された。主催者は同日に「株式会社エイベック研究所」から社名変更をはたした「クオン株式会社」。当日会場には754名の参加者が集まり、各界の有識者・企業のキーパーソンから、将来のマーケティングに活かせる研究結果や最新のマーケティング事例が紹介され、大いに盛り上がった。
今回はそのなかから、「NEWクレラップ」でおなじみの株式会社クレハ執行役員管理本部長 山田文彦氏のセッションをお届けする。競合との勢力争いが続く「NEWクレラップ」は、価格競争に走ることなく、いかにロイヤルユーザーの拡大を行ってきたのだろうか。
競合からシェアを奪うより、
「絶対にNEWクレラップ」というファンを増やす
株式会社クレハ 執行役員 管理本部長。1984年呉羽化学工業株式会社(現 株式会社クレハ)入社。工場の人事部門を経験した後、営業部門へ。B to B形態の化学薬品の営業に加え、NEWクレラップを始めとする家庭用品の事業部門においてB to C形態の営業を経験。家庭用品事業部長時代に「クレラップ コミュニティ」をクオン株式会社とともに立ち上げた。
本日は、NEWクレラップという食品用ラップ製品についてのコミュニティを立ち上げ、どう運用してきて、どのようなプラスがあったかというお話をいたします。
株式会社クレハはもともと、医薬品、農薬、炭素繊維、エンジニアリングプラスチック、化学薬品などの製造販売をしている会社で、大部分がBtoBの事業です。そのなかで、ほぼNEWクレラップだけがBtoC。私自身は、化学薬品の営業、人事部という経歴を経てクレラップの営業担当になりました。BtoCのマーケティングについては、いわば素人でしたので、業界特有の商談テクニックや販促提案の引き出しがなく、NEWクレラップユーザーと正面から向き合って考えるしかありませんでした。そのことが、コミュニティ立ち上げにつながったと、今は考えています。
そもそもNEWクレラップの国内シェアはどれくらいか。某社のラップと合わせると、国内市場の8割を超えるシェアを持っていますが、NEWクレラップはそのうちの半分弱くらいを占めています。過去、当社のセールスはシェアナンバーワンをとろうと、あの手この手で努力してきました。例えば、小売チェーンに売り場提案、企画提案をするなどです。でも、結果として10年以上この勢力図は変わらなかった。売り場獲得競争は、価格の引き下げばかりを引き起こしがちでした。
一方で当社は、商品改良にもずっと力を入れてきました。ラップを切れやすくする、くっつかないようにするなど、さまざまな工夫を重ねてきています。こうした改良を毎年春に行っていることから、私たちはパッケージに“NEW”クレラップと入れています。いつでもNEW、いつまでもNEWという想いを込めています。しかし、この品質・使い勝手の改良がそのまま市場シェア獲得につながっているのかというと、必ずしもそうではありませんでした。
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