6月23日にクオン株式会社主催の、インターネット上の消費者コミュニティについての大規模なセミナー「QON DAY 2016」が開催された。当日は754名もの参加者が集まり、各界の有識者・企業のキーパーソンから、将来のマーケティングに活かせる研究結果や最新のマーケティング事例が紹介され、大いに盛り上がった。
今回ご紹介するのは、教育事業を中心に様々な事業を展開するヒューマンホールディングス株式会社の総合戦略室 シニアマネージャーの佐々木幹氏のセッション。通信講座の新規受講につながる「顧客の声」をどのように集め、効果的に活用していったのか。コミュニティ運営の具体的な事例をもとに探っていく。
企業発信での広告・販促が
効かない時代に何をするべきか
1989年ヒューマンアカデミー入社、営業(生徒募集)、広報・広告、新規カレッジの立ち上げ、教務、学務、パナソニックとのJV立ち上げなどを経て、2008年5月より通信教育「たのまな」のセンター長職に就任。通信新商品開発、フルフィルメント、受講生・修了生管理、リピート紹介、プロモーション全般を手がける。2016年4月よりヒューマンホールディングス株式会社に転籍。
ヒューマンホールディングスのグループ会社、ヒューマンアカデミーでは、800ほどの講座やカレッジを運営しており、30年間で約126万人の修了生・卒業生を世の中に送り出してきました。そのなかに、「たのまな」という社会人向けの通信講座・通信教育があります。今回は、この「たのまな」でコミュニティを運営し、そのことがどう売り上げにインパクトを与えたのかということをお話しいたします。
この「たのまな」では、医療事務や保育士、宅建などの講座ももちろんですが、トリミングやドッグトレーナーなどの動物関係、ネイリストを目指すコース、クリスタルデコレーションと呼ばれるハンドメイドの講座などもあります。私が2008年にセンター長に着任した時は、年間のお申込が9000件くらいでした。今は2万2000件にまで伸びています。
2008年当時に考えたこととして、もう企業発信の営業や広告、販促などで商品やサービスの価値を伝えることは難しい、というのがありました。商品やサービスを選択するのはお客様です。消費者の口コミやレビューの影響力が大きくなってきているという時代背景があり、企業発信の広告をいくら打っても、お金が出て行くだけで蓄積されるものがない。そのような状況で、どうしたら営業利益を出せるのかを考えました。
売上を上げる? 原価を減らす? 販管費を減らす? お客様に選ばれるサービスになるには、運営やサービスの改善をしていかなければいけません。でもそこにお金をかけると、少なくとも単年度で見れば営業利益は悪化する。そこでどうしたらいいのか考えた結果、ひとつのスパイラルを思いつきました。
それは、運営・サービスを改善し、高品質化することでユーザーの満足度を上げ、その価値をユーザー自身に発信してもらい、その声自体を販促に使うということです。コンバージョンが高まれば、営業利益が上がり、さらに運営・サービスの改善が図れる。こういった正のスパイラルがまわるようになれば、と考えました。ポイントとなるのはレビューの質です。ロイヤルティの高い声が集まらないと、コンバージョンには転換しません。また、良いレビューも悪いレビューも両方発信しないと、信ぴょう性が高まらないので、悪いレビューも積極的に開示するようにしました。
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