ソーシャルメディアを上手く活用して、お客さまの声を聞きたい、自社のファンを増やしたい。そうしたニーズを持つ企業は少なくないだろう。大手化粧品メーカーの資生堂は1年半前に自社コミュニティ「SHISEIDO おめかし会議」を立ち上げ、顧客の声を集めながら、資生堂ファンのロイヤルティを高めることに成功している。その背景には、どんな秘訣があったのか。資生堂のコミュニティづくりのキーマン4人と支援を行ったエイベック研究所に、成功する企業のコミュニティづくりを聞いた。
Photo by Mihou Moriya
――「SHISEIDO おめかし会議」の立ち上げから1年半が経ちました。改めて、導入までの経緯や課題をお教えいただけますか?
仙田 弊社では以前からソーシャルリスニングに取り組んでいましたが、ソーシャルメディア上で資生堂の話題がつぶやかれても散逸しており、深い会話につながらず、有意義なデータとして収集、ストックすることが難しいという問題がありました。そこで、お客さまの声を収集する仕組みや場をオウンドメディアとして作れないか、さらに場を作ることで資生堂ファンのロイヤルティを向上させられないかと考えたのです。
臼井 導入にあたり、参考にした事例は大きく分けて2タイプありました。1つは最初からオープンにし、まず多くの方を呼び込み、ファンになっていただくところからはじめるもの、もう1つはすでに存在しているファンを呼び込み、その方々のロイヤルティを高め、そこからファン層を広げていくものです。弊社では、資生堂が好きというお客さまのロイヤルティをさらに高める後者のアプローチが適切であると判断しました。
遠藤 オープン当初は400名のコアなお客様に参加していただき、運営状況を見ながら段階的に人数を増やしていく計画でした。どのタイミングで人数を増やしていくのかというルールは決めていましたが、実際にはコミュニティの状況を見ながら、いい空気を壊さないように、緩やかに参加者を増やしていった経緯が印象に残っています。
仙田 私たちにはお客さまの声を聞き、それをマーケティングに生かしたいという思いがありましたが、まずはコミュニティがお客さまにとって心地よい場であるという大前提が必要でした。そこで自分たちの聞きたいテーマを投げながらも、お客さまが安心して会話ができるよう細心の注意を払いました。
岡田 私はブランドのPR、IMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)などコミュニケーション全般を計画、実践する立場にありますが、まずは、各ブランドに「おめかし会議」とは何か、説明して分かってもらうことから始めました。これまでのデジタルマーケティングに対するブランド担当者の理解は「情報をネット上に拡散すること」でした。その正反対ともいえるクローズドな空間にサンプルやプレゼントを提供することで、どのようなメリットがあるのか、という反応はありました。
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