顧客の顔が見えない――ニッポンハムグループのはっ酵乳・乳酸菌飲料の専門メーカー・日本ルナは、1993年、「バニラヨーグルト」を発売した。高い人気を誇る主力商品に育ったものの、明確な顧客像がつかめないでいた。そこで「バニラヨーグルト」に特化した「バニラヨーグルトコミュニティ」の運営を決断した。運営者がバニラヨーグルトのおいしさの秘密を解説し、熱心なファンがとっておきの食べ方やヨーグルトに対する熱い思いを語る。そんなウェブ上のやりとりは、より多くの顧客のファン化を促し、社員の士気を高める効果をもたらし、工場見学のようなリアルイベントを実現させた。ウェブからリアルへ、リアルからウェブへという好循環を体験した日本ルナの運営担当者2人と運営支援を行うクオンの担当者にコミュニティ運営の効用と配慮すべき点を聞いた。
齋藤祐基(さいとう・まさのり)さん:日本ルナ マーケティング部部長
関戸佑里(せきど・ゆり)さん:日本ルナ マーケティング部マーケティング課
吉原和希(よしはら・かずき)さん:クオン コミュニティコンサルティング部 コンサルタント
商品発売から20余年、
明確な顧客像をつかめていなかった
――日本ルナの公式コミュニティサイト「バニラヨーグルトコミュニティ」は2016年5月13日にオープンしました。主力商品であるバニラヨーグルトに特化したコミュニティを立ち上げようと考えたのはなぜでしょうか。
齋藤 2014年に新設されたマーケティング課へ営業から異動してきた私は、バニラヨーグルトの販売を拡大するためには何ができるのかを考えていました。そこでお客さま像を調べようとしたのですが、明確に解かるデータが何もなかったのです。そんなとき、武田隆さん(クオン代表取締役)のセミナーに参加して、ある企業がお客さまの声を直接吸い上げて商品開発に生かしているという事例を聞きました。お客さまと直接つながるという仕組みが非常に面白いと思うとともに、バニラヨーグルトでも同じことができないかと思いました。
――バニラヨーグルトは発売から25周年を迎えた人気商品ですが、直接声を聞く仕組みはなかったのですか。
齋藤 フタを集めて応募していただくキャンペーンなどは行っていたのですが、この方法ではお客さまの声を継続して聞くことができません。セミナーの後の懇親会で武田さんにご挨拶をして、そのときに紹介してもらったクオンの吉原さんに相談するようになったのです。吉原さんからは「バニラヨーグルトはコミュニティに向いている商品です」と、熱心な説明を受けました。
――吉原さんは、なぜヨーグルトという商品がコミュニティに向いていると考えたのでしょう?
吉原 実際、私の祖母の家の冷蔵庫には必ずバニラヨーグルトがあって、それを食べるのが楽しみでした。歴史のある商品ですし私と同じようなヨーグルトを通じた楽しい思い出を持っている消費者の方はたくさんいるはずなので、コミュニティに向いている商品だと思いました。
――日本ルナさんはコミュニティを作る前、ツイッターやフェイスブックのようなSNSを使ったコミュニケーションを活用していましたか?
齋藤 SNSはほとんど活用していませんでした。当時、企業がSNSを積極活用するようになっていましたが、当社はSNSには消極的でした。お客さまと直接つながる仕組みがないことを危惧して部長と課長の私(齋藤氏の当時の肩書き)で、まずは社内から説得することを始めました。
――コミュニティサイトに対して社内外からは、どのような意見や質問がありましたか。
齋藤 当社は広告宣伝をあまりやっていなかったので、まず費用対効果に対する質問が多く出ました。それに対しては「ブランディングにより生涯顧客をつくることが目的なので、すぐに売り上げに結びつくものではありません」と答えました。炎上のようなリスクも指摘されました。
――クオンさんに相談してからオープンまでに、どのくらいの時間がかかったのですか。
齋藤 2015年にセミナーに参加して、すぐにクオンさんと商談をしつつ社内外の説明に動き、ようやく2016年3月に決済が下りて、2カ月で準備をし、その年の創立記念日でもある5月13日にオープンしました。実は同種の提案を別の会社からもいただいていました。どちらの提案がいいのか決めかねていたのですが、クオンさんの熱意と、クオンさんが運営するコミュニティの温かみが決め手になりました。
【PR】