ネットメディアがページビューを追求しすぎた結果、記事の内容よりもどれだけ読まれたかが重視され、結果としてネット上には劣化した情報があふれている──。元ヤフー・トピックス編集責任者で現在ウェブメディア「THE PAGE」編集長を務める奥村倫弘氏は、新著『ネコがメディアを支配する』の中でそう指摘する。奥村氏にウェブメディアが抱える問題点について話を聞いた。(聞き手・構成/田上雄司)
取材もしないコタツ記事は
ニュースではない
インターネットメディアの売上のほとんどを支えているのは、広告収入です。ニュースを提供する会社はネットに配信した記事でマネタイズができ、その恩恵を受けた読者は無料で記事を読むことができます。
ただ、ページビュー(PV)数に収益はほぼ連動するので、「ネットメディアはPVをとにかく稼げばいい」というPV至上主義が生み出されてきました。何が書かれているかより、どれだけ読まれるか(見られるか)のほうが、残念ながら重要になってしまった。
今でもコストをかけながら、本来あるべきメディアとしての活動をしている多くは、新聞社や出版社、通信社などの伝統メディアです。一方、ネット専業のメディアでもまじめにメディア活動をしようとしているところもありますが、多くは収益性に苦しんでいます。
よいニュースかどうかは、けっして扱うテーマが硬いか柔らかいかではありません。エンタメは価値がなくて、政治経済は価値があるという話でもありません。むしろコンテンツが作られるプロセスの違いです。
要は、客観的に人に取材し、事実かどうかを検証したうえで記事にしているかどうかということ。新聞や雑誌といった伝統メディアが強いのは、意見をただ連ねるだけではなく、事実を集めてきて編集者がしっかりと整理して記事にまとめるプロセスを経ているから。それがニュースの一番のベースだと思います。