2002年、かつて日本最大級の規模を誇った祖業の造船事業を切り離し、すっかり環境エンジニアリング会社の色が濃くなった日立造船。5月に新長期ビジョンと新中期経営計画を打ち出した谷所敬社長に、今後の成長戦略を聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
──「日立造船」という社名を冠していますが、実は日立グループからは第2次世界大戦後の財閥解体で離脱しているし、かつて日本最大級の規模を誇った造船事業も、中国、韓国勢の台頭によって2002年に切り離しました。「日立」も「造船」も事業内容には関係ありませんよね?
怪しい社名でしょ?(笑)。一時はコーポレートブランドにもしている「Hitz(ヒッツ)」にいつか変えようかって話もあったんですけど、まだHitzがそんなに馴染んでいないので、まぁ社名変更は当面ないでしょう。
──日立造船のメイン事業の一つである海水淡水化プラント事業では、2015年にカタールで大型プラントを受注しました。儲かりましたか?
利益面ではトントンくらいだった。やっぱり中東地域で仕事をするっていうのは難しい面があるんですよ。
何でかっていうと、今は原油価格が昔と比べて低いから、石油に依存してきた中東のいろんな会社の具合がみんな本当に悪いわけです。だから、工事を進めるに当たって私どもがいろいろ発注しても、作業が継続できない会社があった。それが納期遅れとかにつながってしまった。作業者の質が悪かったりね。
その点、日本の会社は中東で信頼が厚いんですよ。プラントの性能面はもちろん、工程が遅れそうになってもできるだけ契約納期に合わせる努力をするからです。