「知り合いとの不倫などでなく“風俗”という点に救いがあると個人的には思いましたが、それはあくまで男の論理。わりと純真な育ち方をしてきて、父の愛を一身に受けてきた母が大きなショックを受けたであろうことは想像に難くありませんでした」

 父の話によると、母は当初憔悴した様子だったがやがて毅然と父を無視するようになったという。1週間後、食卓に母の署名がされた離婚届が置いてあるのを父は発見した。父が「これはどういうこと?」と尋ねると、母は「見ての通りです。署名してください」と他人行儀に答えた。父がこのひと月で母と交わした唯一の会話らしい会話であった。

「母の気持ちは想像できますし、最終的な判断は母に任せるしかないと思いました。しかし今一度夫婦で話し合う機会を設けるべきなのではないかと考え、2人がいるタイミングを見計らって『話がある』と切り出しました」

 父から浮気の話を聞いたこと、自分は母がどんな決断を下そうともその考えを支持することを、Cさんは両親に伝えた。

「もし両親が離婚するにしても、母のわだかまりが少しでもいいので解消されるか、溜め込んだ気持ちが開放される場が必要だと思っていました。母の前で、第三者である私が父の非を指摘することである程度それがなされるのでないかと、『お父さんはおろかだった』と言うつもりだったのです」

 しかしCさんがそう言う前に口を開いたのは父だった。「○○(Cさん)が口を挟む問題じゃない」と静かな怒りを漂わせて呟いたのだった。自分の過失で招いた問題に息子を関わらせたくはないという親としてのプライドもあったのであろう。この父の言葉に反応したのは母だった。