小飼弾(こがい だん)
小飼弾(こがい だん)
本職はプログラマー。専門書からマンガまで、彼が書評で紹介する本がことごとくベストセラーになる「カリスマαブロガー」。著書に『小飼弾のアルファギークに逢ってきた』があるhttp://blog.livedoor.jp/dankogai/

小飼 ダイヤモンド・オンラインを見てパッと気づくのは、ITmediaとかCNETに比べると、読者のフィードバックを拾う仕組みが弱い。

 SBM(ソーシャル・ブックマーク)のアイコンをつけたのは正しいんですけれど、トラックバックとかコメントを受ける仕組みは用意してもいいです。すぐに(コメント内容を)反映させる必要はないんですけど。

勝間 そうですね。コメントは承認指定入れれば、荒れませんから。

 私はコンバージョンが弱いと感じます。最終的に、オンライン広告を増やしたいのか、週刊ダイヤモンドの定期購読者を増やしたいのか、そこがわかりにくい。

 事は単純で、ダイヤモンド・オンラインでいくら売上高を立てたいのか、ということなんです。まずは金額から決めて、そこから逆算する。

小飼 ああ、やっぱりさすがだな。いちばん曖昧になりにくいものから来ましたね。とりあえず、「何」ではなく「ナンボ」を語ろうと。

勝間 週刊ダイヤモンドとの連携もちょっと弱い。今、ITmediaの話がでましたけれど、ああいうかたちでウェブ展開して紙とのリンクをどんどん切っちゃってますよね。

 それに対して、ウェブと紙を真面目にリンクさせてるメディアって、まだだれもやってないんです。これは一つの方向性。

小飼 ネットがなかったころには、雑誌は本にするためのストック、バッファとして働いていたでしょう?。雑誌で少しずつ書きためていって本にする。今はウェブがあるけれど、こっちは書きためている間は普通はカネにならないんです。だから、ここをどうつなぐか。

勝間 これは一般論として言うんですけど、ウェブには本当だったら雑誌に載せられない低レベルのコンテンツも多い。

 だったら時間のムダなので雑誌見ればいいじゃないか、あるいは特定分野の深い話を知りたいんだったら、弾さんみたいな個人ブログで商用じゃないものを見たほうが楽しい。

小飼 とんがりがないとだめですね、ウェブの場合は。だから、総合ナントカというのはいちばんダメで、それを上手くやれるのはヤフーだけです。

勝間和代(かつま かずよ)
勝間和代(かつま かずよ)
知的生産術、決算書の読み方からフレームワーク力の鍛え方まで、彼女の書く本がことごとくベストセラーになる「知的生産術の女王」。近著は『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』 http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/private/

勝間 著者がよっぽど立っていないとオンラインコンテンツの連載読まないですし、立っているんだったら雑誌でいいじゃないかという話になってしまって、そこが非常にアンビバレントですね。

 あと、ダイヤモンド・オンラインでも個人ブログでも同じことなんですけど、いちばん大変なのは集客コストなんです。集客の仕組みがないのに、どんなにコンテンツを充実させても、ある意味ムダなんです。

 私、ダイヤモンド・オンラインの集客の仕掛けって、メールマガジンくらいしか知らないんですけど、ほかにどんな工夫をしているんですか?。

小飼 ヤフーにニュース配信してますよね。

勝間 そのくらいだと手数は圧倒的に少ないですね。トラックバックもコメントもできないから集客が広がらないし、定期購読じゃないからみんな忘れちゃいますし。

小飼 「How Much Is Your Blog Worth」っていうサイトがあるじゃないですか。ブログじゃないけど、ダイヤモンド・オンラインは「0」で出る(笑)。ちなみに、僕のブログはというと、、120万ドルちょっとかな。

 これはお遊びですけど、高い値段がついているサイトを見ると、単純にページビューが多いだけでなく、そこにお金が落ちる仕組みを用意してあるところが多いです。だから、ページビューが多いからといって、高い値段がつくわけじゃない。これは、結構ダイヤモンド・オンラインのあり方を考えるポイントだと思う。

勝間 1回、徹底的にダイヤモンド・オンラインに集客してみるのもいいと思いますよ。お金をかける手段、かけない手段を組み合わせて。

小飼 駅前でティッシュを配るとか。違うか(笑)。
 
勝間
 オーバーチュアとかアドワーズも試してみたことないんだったら、どんどん試してみるべきです。自分が広告主になると、広告主の気持ちがわかるので。

 トラックバックやコメントなんてプリミティブなテクノロジーですけど、使えるテクノロジーはできるだけ試してみたほうがいいと思います。

本対談は、週刊ダイヤモンドにも掲載される予定です。

小飼 だから、ネットの空気を吸えということなんです。ネットにただモノを置くだけでなくて、置いたらどうなるか。

 口先でモノを言うやつは、ウェブでも現実世界でもいくらでもいますけれど、手を動かしているのは、おまえたちのうちの何人だい?って、そういう話です。

企画構成/『週刊ダイヤモンド』副編集長 藤井一  撮影/住友一俊