ギリシャをめぐる情勢がヤマ場を迎えている。金融支援を取り付けたいギリシャは、増税や公務員削減などによる財政再建を目指すが、国民の強い反発で思うように進まない。10月に予定されている80億ユーロの支援が得られなければ、ギリシャの破綻は避けられない。欧州は「10月危機」を乗り切ることができるか。

 9月27日夜、ギリシャの首都アテネの国会議事堂の内外は、緊迫した空気に包まれていた。

 議事堂内では、ギリシャの命運を左右する大事な法案の審議が行われていた。財政再建を目的とした新しい不動産税の導入に関する法案である。もしもこの増税法案が否決されるようなことになれば、ギリシャは、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による80億ユーロ(約8300億円)の金融支援を受けられなくなり、公務員の給料や年金の支払い、借金の返済などができなくなるデフォルトに陥ってしまう。

 野党だけでなく与党内にも増税に慎重な勢力があり、法案の成立が危ぶまれていたが、なんとか僅差で可決された。

 かたや議事堂の外では、揃いの制服を着た男たちが横断幕を持ってデモ行進をしていた。財政再建の一環として政府が打ち出した3万人の公務員削減、年金支給の減額、不動産新税の導入に反対する警察官である。デモ行進を止める側のはずの警察官が、群れをなして議事堂の周りを取り囲む。異様な光景だ。

 ギリシャでは連日、政府の財政緊縮策に反対する大規模ストライキが起きており、来る10月5日には、24時間のストライキが予定されている。2010年5月に行われたデモでは死者が出ているだけに、緊張感が高まっている。

 融資の前提条件だった増税法案が議会の承認を得たことで、ギリシャのデフォルトは一時的に回避された。しかし、同国の財政危機は、収束するどころかむしろ悪化の一途をたどっている。財政赤字削減のための緊縮策が景気を失速させているからだ。