緑豊かな公園でジョギングをする高齢女性写真はイメージです Photo:PIXTA

「運動をよくする人は長生きする」という研究結果は広く知られている。しかし、その結果だけを見て「運動すれば誰でも長生きする」と結論づけてしまうのは早計かもしれない。データの裏側に隠れた落とし穴とは?※本稿は、内分泌代謝科専門医・疫学専門家の井上浩輔『「もしも」で命は救えるか?因果推論入門』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

溺れる事故を減らすためには
アイスの販売を規制せよ?

「アイスクリームの売上が増えると、溺水事故も増える」という統計データがあります。

 この話だけを聞くと、まるでアイスクリームを食べることが溺水事故の原因のように見えます。しかし実際には、その裏に「暑い夏」という共通の要因が潜んでいるだけなのです。

 つまり、同じタイミングで起きている出来事(相関)があっても、それが原因と結果(因果)を意味するわけではありません。この区別を間違えると、たとえば「アイスを規制すれば溺水事故は減る」といった明らかに誤った結論にたどり着いてしまうのです。

 この「第三の要因」によって、あたかも直接関係があるかのように見えてしまうのが「交絡」という現象になります。そして、この交絡によって因果関係の推定がゆがむことを「交絡バイアス」と呼びます。

 医療や社会科学の研究では、この交絡が至るところに潜んでいます。たとえば、「お酒をよく飲む人は肺がんになりやすい」という研究結果が発表されたとしましょう。ニュースでこの話を耳にすれば、多くの人は「お酒が肺がんを引き起こすのか」と考えると思います。