ガチ中華の四川火鍋ガチ中華の四川火鍋(筆者提供)

日本風にアレンジせず、本場中国の味をそのまま提供する「ガチ中華」。日中間の往来がほぼ途絶えたコロナ禍に、東京ではなぜか、こうした店が相次いでオープンした。その背景には、日本で暮らす中国人の増加や経済力の向上、さらには中国人社会そのものの変化がある。なぜ「ガチ中華」は一大ブームとなったのか。そして、出店ラッシュの先に待っていた淘汰とは――。中国の食文化と在日中国人社会の変化を追う。※本稿は、フリージャーナリストの中島 恵『中国の回鍋肉にキャベツは使わない 中華料理から見つめる日本と中国』(ウェッジ)の一部を抜粋・編集したものです。

コロナ禍の東京都内で
続々と「ガチ中華」が開店

「ガチ中華」がブームになって以降、中華料理好きな友だちの間では「今度、ガチ中華を食べに行かない?」という会話が飛び交い、ガチ中華という「ジャンル」として確立した。

 高級中華や町中華、そのどちらでもない普通の中華なら、「今度、池袋にある〇×に行かない?」と店名を出して誘うはずだが、ガチ中華の場合は、ガチ中華に行くこと=本場の料理を食べに行く、といった一段階上(?)の中華料理通であるといったニュアンスを醸し出すようになった。これは日本の中華料理界において、画期的なことではないかと思っている。

 ガチ中華がこれほどまでに日本で認知されるようになった背景として、私は主に2つの理由があると思っている。

 1つ目はコロナ禍だ。20年初頭から武漢で流行し始めた新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に広まり、日本でも同年四月に緊急事態宣言が出されるなど大きな影響を及ぼした。

 日中間の往来はほぼストップし、日本人が中国に行くことも、中国人が日本に来ることも難しくなった。