最大の特徴は、従来の金属製のかぶせものや詰めものと比べて、加工性と耐久性に秀でているところである。現在、歯科治療の現場で導入が進むCAD(コンピューター・システムを使った治療)や、CAM(コンピューター・システムを援用した歯科材料の製作)に適するようにデザインされた。

歯科材料の分野では“脱金属”が進行する

 実は、ここに大きなポイントがある。例えば、今では世間で前歯に金歯や銀歯を入れている人を見掛けなくなって久しい。その背景には、(1)審美性という観点、(2)金属アレルギーの問題、(3)レアメタルの価格変動などの要因がある。そして、将来的にも“脱金属”が加速する流れが見込まれる。

 14年に前歯の左右にある犬歯の奥の小臼歯まで樹脂ブロックの適用が進んだことも、脱金属を進めた。この新しい市場で、独走できる期待感があるのだ。

 今後、小臼歯の先にある大臼歯(奥歯)まで保険が適用されるかどうか未知数だが、岡田は「これからCAD/CAM用の歯科材料は伸びる。新素材を軸に、18~19年度に約200億円の売り上げ規模まで育てたい」と力を込める。

 過去40年ほど、各種の歯科材料を扱ってきたことで、欧米を中心に90カ国以上に製品を輸出する。さらに、臨・産・学・官(臨床、企業、大学などの研究機関、霞が関)を横断する岡田は、今年6月に発表された「平成29年版の産業ビジョン」(歯科医療技術革新推進協議会・編)の策定に参画を要請されるほどに大化けした。

 16年度のクラレの連結売上高は4852億円、営業利益は678億円。かねて同社は、南米原産の白いアルパカと“ミラバケッソ”という造語を使って「未来に化ける新素材を開発する」と訴求してきた。チーム岡田が率いる部材の数々は、規模は小さいがミラバケッソの具体例の一つである。「あと3年で定年」と明かすが、周囲の人たちが放っておかないだろう。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

【開発メモ】治療技術は日進月歩
 歯科治療の世界では“デジタル化”が進む。従来は、かぶせもの(補綴物)は石こうで型取りして模型を作り、歯科技工士が手作業で製作していた。現在では、口腔内の画像データを読み取り、歯科技工士がデータを基に機械で補綴物を削って成型する手法が主流となりつつある。CAD/CAM技術の進歩により、作業効率や仕上がり品質が飛躍的に向上した。

写真提供:クラレノリタケデンタル