OccupyWallStreet(ウォール街を占拠せよ)のデモとその機運が、燎原の火の如く全米に拡大している。

 OccupyWallStreetは、そもそも9月17日頃に始まったアメリカの金融システムに抗議するデモだ。リーマンショック以来の危機から立ち直れずにいるアメリカ経済。失業率は高止まりし(9月は9.1%)、どんなに仕事を探しても職にありつけない人々が方々にいる。さらに追い打ちをかけるように、食糧やガソリンなどの生活必需品の値段が上がり、生活はますます厳しくなっている。

 ところが、ウォール街に目を向けると、100万ドルの年収をもらって当たり前とでもいうような相変わらずの振る舞い。サブプライムローン問題で世界経済を苦境に陥れた過去などおかまいなし。ウォール街だけではない。大企業のトップの多くは、今でも数百万ドルもの報酬を得ている。

 いったい、この貧富の格差は何なのか。突き詰めて言えば、その思いがデモに参加している人々の動機だろう。政策に大きな影響を及ぼす企業の権力を制限し、民主主義をマネーゲームから解放して、普通の人々の生活を守るものに戻して欲しい――。それが、デモの参加者たちが唱えている「We are the 99%.(われわれ普通の人間こそ、この社会の99%の成員だ)の真意である。

 さて、デモ自体は目新しい手法ではないが、このOccupyWallStreetにはテクノロジーの活用法を含めて組織化の優れた手法が多数用いられており、われわれも大いに学ぶところがある。

 たとえば、ウェブサイトひとつとっても、その整然とした様には驚くべきものがある。デモの主旨はもちろんのこと、ネットフォーラム、参加者へのスケジュールの通知、寄付希望者の手続き方法、参加者の分布図などが容易に見渡せる。誰かテクノロジーに強い人間がバックについているのだろう。

 OccupyWallStreetが占拠するズコッティ・パークに行けば、この運動をうまく機能させるための組織構造が周到に整備されていることもわかる。

 事務局のような役割を果たしているのは、ニューヨークシティー・ジェネラル・アッセンブリーというNPO。ここが毎日会議を開いて、今後の活動や日々の細かな運営方法を決めている。ただし、会議には誰でも参加できるようになっている。OccupyWallStreetは、リーダーのいないデモ活動、すなわちコンセンサスによって行動する集団を標榜しているからだ。