世界有数の企業から出資を受ける
高齢者向けのロボットと言うと、日本ならばすぐに介護ロボットを思い浮かべるだろう。身体の動きが緩慢になり介護が必要になった人を支えたり、家での用事をしたりするロボット、あるいは重労働をする介護者をサポートするようなロボットだ。
残念なことに、こうしたロボットはいずれ登場しそうだが、まだ完全にその姿を現していない。物理的な面で生活支援に役立つロボットは、まだ技術的に難しいからだ。
一方、アメリカでは、ロボット産業も「まず金になるのは何か」を考えるのに長けている。そして、日本と同じように高齢者の生活にロボットが役立つと期待しているが、彼らがまず市場に出そうとするロボットは、すでに技術的にも実現可能で、手頃な値段で市場に投入できるといったタイプだ。
そのタイプは、物理的、あるいは身体的に高齢者をサポートするのではなく、「精神的なコンパニオン」となるロボットと言える。高齢者が精神的に自立して生活し、それでいて孤独を感じさせなくする。その代表格が、『エリキュー(ElliQ)』である。
実はエリキューを開発するインテューイション・ロボティクスには、トヨタのAIベンチャーやアイロボット、サムスン、ブルームバーグをはじめとして、メジャーな投資家が集まり、現在まで総額2200万ドルを調達している。その技術への期待の大きさが感じられる。エリキューは現在、限られたユーザーのもとでベータテスト中だ。
エリキューは、ロボットと呼ぶには程遠い外見だ。目鼻や手足がなく、卓上の置物のようである。だが、肝はその頭脳だ。先端的なAI技術を利用して、ユーザーのスケジュールを覚え、ユーザーの気持ちを察して、その上でユーザー個々人の毎日の生活を支えるのだ。