医師の処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)から、処方箋不要のOTC(大衆薬)に転用された医薬品をスイッチOTCという。7月の国の「第2回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会)では、医療用医薬品である緊急避妊薬のスイッチOTC化の妥当性が議論された。医師、薬剤師、消費者代表などで構成される委員からは「OTC化は妥当ではない」という意見が相次ぎ、スイッチOTCそのものにあらためて注目が集まっている。『週刊ダイヤモンド』10月21日号の第2特集「追い風は本物か 踊り場のOTC」の拡大版としてキーパーソンたちのインタビューを全4回でお届けする。第2回はスイッチOTC検討会の委員、乾英夫・日本薬剤師会副会長に聞く。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)
――薬剤師会としてのスイッチOTCへのスタンスを教えてください。
基本的には国民の生活の役に立つ医薬品であれば賛成。ただ安全、安心を担保できるもの、誤った使い方、目的外使用などが起こるようなものは十分、慎重に。今の制度でどこまでできるのか。やはり対面販売をしないと、安全性を担保できないものも当然ある。
――医師会は生活習慣病治療薬のスイッチを認めない考えです。薬剤師会も分野によって方針がありますか。
それはない。薬剤師が服薬指導して安全性が担保されるのであれば、しかも生活者にとって役に立つものであれば個別に考えます。
――7月の検討会では緊急避妊薬について、「現状制度ではスイッチ後、原則3年で第1類医薬品になる」として慎重な姿勢を示しました。
1類になるとインターネット販売が可能で、薬剤師による対面販売から外れる。国としてはルールを作って「ネット販売でも必ず薬剤師が相談に乗る」となっているが、それが必ずしも順守できていない。そういうことが非常に心配。実際に生活者にその医薬品が必要かどうかは、店頭に来ていただいて、お話をあれこれ聞いて分かるし、「このケースなら医師への受診を奨励する」ということもある。それは対面でなければ分からない。