食べるスピードというのは人それぞれで誰に合わすというわけではありませんが、まわりを見て多少の気遣いは必要でしょう。食べたくないものや冷めてしまったものは次の器が来たらさりげなく、仲居さんに返してあげたいものです。

 料理屋さんやお茶屋での食事は最後の水物を出すタイミングが難しいらしく、器を溜めている人に断ってからと言うのは何ともやりづらいらしい。楽しい食事の席での些細な事ですが、意外と年寄りは見ているようなので気をつけたいものです。もう一つ大事なのは、器やお皿を絶対に重ねてまとめない事、そして器を引くのは仲居さんのお仕事で貴重な器を使っていたりするから要注意です。

 宴席には芸舞妓衆は勿論ですが、時には地方さんが入り食事の途中に舞を舞って、もてなしてくれます。芸舞妓衆がいればお酌もままならず、盃のやり取りにも気を使います。注がれて飲み干したら杯を置かず、盃洗を通して戻すか口を付けたところをさっと拭いて返盃をする。マナーというほどではないけれども、これをさっとやってのけると格好が良いです。

 芸舞妓さんのお座敷でのお仕事は、舞を舞う事。お酌は勿論ですが、決して偉そうな口ぶりや態度は禁物です。ここにも互いの気遣いと芸事への興味が必要なようです。食事の仕方や酒の飲み方、自分流が一番だがマナーとまではいかないにしても楽しい時間のための気遣いは、あれこれとさまざまなところに隠されているようなのです。