医療従事者から注射を受ける男性写真はイメージです Photo:PIXTA

「医療保険に入れば、誰もが健康になる」。そう考える人は多いだろう。しかし、その「当たり前」を公平に確かめた研究は、実はほとんどなかった。そんななか、アメリカ・オレゴン州で世界的にも珍しい社会実験が実施された。その結果、見えてきた意外な事実とは。※本稿は、内分泌代謝科専門医・疫学専門家の井上浩輔『「もしも」で命は救えるか?因果推論入門』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

最も信頼される比較実験に
ひそむ「限界」とは?

 因果関係をできるだけ正確に確かめる方法として、少なくとも医学の領域で「ゴールドスタンダード(医学で最も信頼性が高い、いわば“基準となる方法”)」と考えられている研究デザインが、ランダム化比較試験です。

 これは、新しい薬や治療法、介入の効果を確かめるために、参加者をランダムに2つのグループに分け、片方には介入A(例:新しい薬や関心ある介入)を、もう片方には介入B(例:従来の薬や治療法、プラセボ薬〔薬効成分はないが、薬の本当の効果を評価するために対象群で使われる“偽薬”〕など)を投与して比較する方法になります。

 ただし、ランダム化比較試験には限界もあります。費用や時間がかかるうえ、倫理的な問題も伴います。たとえば「効きそうな治療なのに、一方の群には与えて、もう一方の群には与えない」という状況は、倫理的に受け入れられないこともあります。

 また、ランダム化比較試験で対象となる人は、特定の条件がそろった人が多いため、実際の患者や国民全体にどこまで結果を一般化できるのか、常に注意が必要です。