昭和49年に起こった「ピアノ騒音殺人事件」は、50代以上の方にとっては忘れられない衝撃的な事件だ。ピアノの音が発端となり、集合住宅に住む親子が階上の住人に殺されるという惨劇となってしまった。
建物の構造や部材の遮音性は、当時に比べれば確かに向上している。しかし、今起こっても不思議はない。本質的な問題は、今も何も変わってはいないからだ。
マンションでは、プライバシー、セキュリティーはあっても、相互のコミュニケーションが乏しい。誤解、思い込み、思い過ごしがトラブルを生み、それを放置すれば、どのマンションでも悲劇は起こる。
シリーズでお伝えしてきたように、ただでさえマンションの将来は厳しい。住みやすさや資産としての価値を損なわないように、「生活音トラブル」を“科学”して、トラブルゼロを目指すためのポイントを提案したい。
マンション生活音トラブルの<統計学>
No.1は「居住者間のトラブル」、中でも常に上位の「音問題」
平成11年以降ほぼ5年ごとに行われている国土交通省によるマンション総合調査で「居住者間のトラブル」はマンショントラブルNo.1の座を一度も他に譲ったことがない。
その中でも「生活音トラブル」は、駐車駐輪問題と並んで常に一、二を争う。生活音といってもさまざまだ。隣人はあなたの家で発生するどのような音を「我慢ならない」と感じるのか?その種類や程度について、様々なアンケートが実施されているので、ウェブサイトを検索してみるといい。
最近ではDVへの関心から、子どもをしかりつける声や子どもの悲鳴、家族内で争う声、物を投げつけるような音が多く指摘されている。