─過去、たとえばYMOの頃は事前に厳密にプログラミングしたサウンドをコンピューターを使って正確無比に再現していたこととくらべると、それは音楽家として大きな変化ですよね?

 だからYMOは演奏しててもおもしろくないんですよ(笑)。ただ、生演奏の部分はつねにまちがえたり機材のトラブルがあったりと不確定要素がある。

 YMOの頃はまだコンピューターと打ち込みで音楽を作りましたと言っても、まだまだ人力の要素が多かった。それで、ぼくはYMOのライヴでもよくまちがえてて、そこがおもしろかった。

 演奏をまちがえると、横でドラムを叩いている高橋幸宏くんのほうをキッと睨んで、あたかも幸宏がまちがえたかのように見せる癖がついちゃったほど(笑)。

 ある曲の一番で、まったく別の曲のメロディを弾いちゃうことなんかもあって、二番になって初めてまちがいに気付いて、即座に幸宏のほうを睨んで正しいメロディを弾くということさえありました(笑)。そういうことがあるからおもしろい。

 ワールド・ハピネスという幸宏のイベントにYMOが毎年出演していた時期(2007~2012)も、なるべく生でやりたかった。実はYMOは生演奏だけでもやれちゃうんですよ。2001年にNHKのテレビ番組で三人だけで完全に生演奏でやったことがあったぐらい。

東北ユースオーケストラ
東日本大震災で被災した学校の壊れた楽器を修復するためのチャリティ「こどもの音楽再生基金」がきっかけとなって2013年に始まった、東北3県の小~大学生によるオーケストラ。定期的に練習会と演奏会を行ない、こどもたちの成長と交流の場となっている。音楽監督は坂本龍一。

 

─生演奏や即興から生まれる偶然性を大切にしたい?

『async』というアルバムは即興ではないけれど、音楽の決まりごとを一切忘れてそのときに思ったことにだけ忠実になろうという方針で作った音楽。

 結果的に形式的になったりしても否定はしないけれど、最初から形式を決めたり、それに沿うということはしませんでした。自由な発想で音を創りたかったんです。

─以前出版された自伝のタイトルも『音楽は自由にする』でした。

 そういえばそうですね。ポーランドのアウシュビッツ収容所の門に掲示されていた「労働は自由にする」という悪魔的なひどい標語を改変したもの。ずっと自由でいたいという気持ちが強いんですね。