電車の中で8人がけの席を見ると、そのうち7人はスマホを眺めています。本を読んでいる人は、一人いればいいほうです。「スマホで本を読んでいるかもしれない」という可能性もないわけではありませんが、もし「知識を得る」ために本を読んでいるのだとしたら、スマホは適切ではないと、『脳を強化する読書術』(朝日新聞出版)の著者で、「脳の学校」代表、加藤プラチナクリニック院長の加藤俊徳医師はいいます。
自身も「難読症(ディスレクシア)」で、本を読むのが苦手だったという加藤医師が、数十年に渡る研究で知ったスマホ読書の弊害とは? 加藤医師に話を聞きました。
私は医学博士として、人の脳の成長過程を専門に研究してきました。「fNIRS法」という脳を分析するための手法を確立し、その方法は現在世界700ヵ国以上の医療機関で使用されています。また、臨床家としてこれまで1万人以上の人々のMRI脳画像を特殊な技術で分析するだけでなく治療してきた経験から、脳を見れば、その人が何が得意で、何が不得意か、どんなくせがあり、どんな生活を送っているかがわかるようになってきました。
例えばアナウンサーの人の脳は、たくさんの文字情報に接しているにもかかわらず、脳の「記憶する場所」や「思考する場所」よりも、「伝達する場所」が鍛えられています。原稿を読んで覚えたり、考えたりするのではなく、「伝えること」に特化しているからです。実際に読んだニュースの内容が頭に残らないという人も多いのです。
このように、脳というのは使い方によって、成長の仕方が変わります。「知識を得やすい脳」、つまり「勉強脳」となっているかどうかは、活字の読み方次第で変わってくるのです。