脱東京ドーム戦略
鍵を握るのは施設の運営受託

 転機は07年1月期に訪れた。金融子会社の外資への売却と減資により、身軽になった。これにより、06年1月期には3053億円あった有利子負債が2223億円に圧縮。その後も不採算のホテル事業からの撤退などにより、17年1月期には1520億円にまで減少した(図(2))。

 しかし07年1月期以降は、10年のジェットコースター事故と11年の東日本大震災の影響で一時無配だった。継続して配当できるようになったのは13年1月期からだ。

 二つ目の課題は、成長戦略だ。有利子負債が重荷となり、積極投資ができなくなっている中で、有利子負債の圧縮に向けてキャッシュを生み出す事業が不可欠だ。

 明るい材料としては、東京ドームシティ事業の収益が安定していることが挙げられる。東京ドームや東京ドームホテル、アトラクションズや後楽園ホール、温泉施設のラクーアなどを含めた東京ドームシティ事業は17年1月期で売上高670億円、同社全体の約4分の3を稼ぎ出している。

 注目されるのは、その内訳だ。東京ドームの賃貸収入、飲食・物販、東京ドームホテルでほぼ均等の3本柱となっている(図(3))。スタジアムやコンサートホールなどの箱物を造った自治体からの視察が絶えないのは、このバランスの良さのためだ。

 東京ドームの稼働率は8割を超え、プロ野球はそのうちの3分の1程度だ。ビジネスモデルも巧みで、ジャイアンツには球場を貸し出し、賃料を取る一方、グッズの販売は東京ドームが仕入れて行うため、その収益が丸々同社に入る。

 コンサートについては、会場の貸し出しのほか、ローリング・ストーンズに代表されるように自主興行も行っている。都内で交通の便が良く、5万人以上を動員できる会場として差別化してきた。

 問題は、投資が不可欠の上、それが利益の増加につながりにくいことだ。16年から3年をかけて、照明のLED化や座席の改善など、東京ドームのファシリティーのために、50億円のリニューアル投資を進めている。18年1月期に減益を予想するのも、その償却負担を見込んでのことだ。

 だが、投資がそれだけでは済まない可能性がある。東京ドームは野球ファンにとって“聖地”であり、ジャイアンツがそう簡単に移転するとは考えにくいが、それでも、老朽化が進めば移転話も現実味を帯びてくる。このような事態を防ぐには、東京ドームへの投資を続けざるを得ない。しかも、それで利益の大幅増加が見込めるわけでもない。

 いきおい、今後の成長は東京ドーム以外の分野に求めることになる。地味ながらポテンシャルが高いのが、スポーツ施設などの管理・運営事業。決算書ではその他事業に相当する。売上高は17年1月期で約50億円、営業利益は同約3億円。営業利益では15年1月期に比べて約3倍の伸びを見せている(図(4))。

 現在、スポーツ施設の管理・運営事業は東京都板橋区の体育館をはじめ、100施設以上で行っている。東京ドームシティ事業で培ったノウハウで、スポーツ施設のほかに、コンサート施設の運営受託も同社は狙っている。

 公的な事業には入札があり、高い利益は見込めないが、受託施設が増えれば、効率化によるコストダウンが可能になる。何より、安定収入になる。東京ドームはホームランを狙わず、ヒットを重ねていくしかなさそうだ。