経営資料が「読まれる」ための数字の見せ方・伝え方

経営資料が機能しない
「フィードバックなし」が常態化

 主に経理部員らが作成する貸借対照表や損益計算書等の財務諸表。これらの数値をベースに落とし込まれた予算実績表や前年度対比表などの経営資料は、定例会議の場で管理職が経営陣に対してプレゼンしたり、各部署で回覧したりする企業も多いことでしょう。

 ただ、資料を使いこなせているかというと話は別です。作成する側の経理部員や受け手側の各部署・経営層が単なる月次の業務の一つとして捉え、「代わり映えしない資料…」「またこの時期か、頭が痛い…」などと感じているならば、経営資料としての機能を果たせていないのも同然です。経営資料は、うまく活用すれば社員が視野を広げて仕事の質を高めることに繋がる最適なツールにもなり得ます。今回は、経理の視点で経営資料の活用の方策をご提案します。

 まずは経営資料の作られ方を見てみましょう。パソコンを睨みながら黙々と入力作業をするのは経理部でよくある風景です。部長が社内チャットなどで、経営資料の作表の締め切り日を共有すると、部員は一様に手を動かします。会話はほとんどなく、活気もあまり感じられません。

 ある企業の主任経理部員の一人は、

「毎月のことですからね。締め切りが告げられたら黙々と進めるしかありません。しかも、私たちが作成している資料を各部署がどのように役立てているかというフィードバックは一切聞こえてきません。決まった作業としてこなしている、という感じです」

 と苦笑します。多くの企業の経理部員が同じような感想を言うのではないでしょうか。自分たちが提供している資料についてのフィードバックがない環境を「当たり前」だと捉える社内風土ができ上がってしまっているのではないかと思います。

 では、こうした経理部が存在する企業の風通しはいかがなものでしょうか。そして、肝心の経営事情の方はどうでしょう。恐らく「良好」だと即答できる企業は稀のはずです。

 これは私が現場で感じていることですが、経理部のみならず、各部署の管理職らも、経営資料について「単なる数字の羅列でしかない」「共有されてはいるが、じっくりと見ていない」といったお粗末な感想が聞こえてくることが少なくないのです。

 生産性の向上が重要視される昨今、経営資料をあるべき原点に回帰させるのは必要最低限のことです。経理部は資料の作り方を、各部署の管理職と経営層は会議の仕方を変えてみることができるはずです。