「一言で言えば、強か」。宮永俊一・三菱重工業社長と親しい中西宏明・日立製作所会長は、宮永社長の人柄をこう語る。
それが最も如実に表れたのが、2014年、産業界で語り継がれる仏重電大手アルストムのエネルギー事業争奪戦である。
三菱重工は、アルストムを買収しようと一足早く動いていた米ゼネラル・エレクトリック(GE)に対抗。火力発電事業で手を組んでいた日立の後ろ盾を得ながら独シーメンスと共同戦線を張り、アルストムに対抗案を突き付けた。
仏政府との駆け引きを含むタフな交渉が必要な、まさに世界規模の大再編劇への参戦。軍配はGEに上がったが、日独連合の登場で、GEが当初の買収計画からの大幅な譲歩を余儀なくされたことは間違いない。
宮永社長は、およそ激高しそうにないソフトな語り口とは裏腹に、強固な意志を内に秘めた、実にアグレッシブな経営者だ。