とはいえ、妻の言い分もあながち間違いではなさそうです。夫婦が離婚し、妻が子どもを連れて出て行けば(もしくは夫が出て行き、妻と子どもが残れば)子どもは父親(夫)と離れ離れにならざるを得ません。離婚しても多少なりとも父親と会う機会はあるでしょうが(父親参観、入学式、卒業式など)、親権を持っていない以上、かなり機会は限定されます。だから、子どもにとって「離婚=父親を失う」と言っても過言ではないのです。

 子どもを育てるのに、片親よりは両親の方がいいはずです。父親という存在が欠けることで、子どもの人格形成に悪影響が出るかもしれません。「どちらの親に付いて行くのか」と子どもが自分で考えられる年齢ならまだしも、物心がつく前だとその影響は深刻です。なぜなら、子どもは自分が望む、望まないに関係なく、知らぬ間に「父親との離別」を余儀なくされるのですから。そもそも離婚すること自体が「親の都合」なのは、言うまでもありません。

「子どもに寂しい思いをさせたくない」と妻に言われたら、夫は何も言い返せないでしょう。だから、表現は悪いですが「子どもを人質にとる」ことは、離婚を回避するための有効なテクニックになり得るのです。

ボロボロになった夫婦の姿を
見せ続けられるほうが子どもは不幸

 少し考えてみてください。

 妻の「夫婦は離婚しない方が『子どものため』」という主張には異論を挟む余地がなさそうですが、本当にそうなのでしょうか?

 もちろん、父親と母親が「おしどり夫婦」で円満な家庭を築き、良好な関係を継続していれば、確かにその通りでしょう。お互いが尊敬し合い、信じ合い、助け合う……そんな理想的な両親なら、子どもがどちらか一方を失うなんて馬鹿げています。

 しかし、離婚寸前の夫婦は、まったく逆なのです。家庭はボロボロで、夫婦の間に信頼関係は存在せず、お互いがお互いを罵り合い、悪口の応酬を繰り返し、何か困ったことが起こっても「助けてあげよう」などと思わず、無視を決め込むのです。「世の中には、離婚間際の夫婦ほど最低最悪の人間関係はない」と言っても言い過ぎではないでしょう。「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」とは、よく言ったものです。

 しかも、離婚の危機を迎えた夫婦がやり直すのは、相当に難しいです。夫婦関係を修復するならお互いの努力が必要ですが、妻は「子どものため」に急場をしのごうと、今までの言葉、態度、考え方などを悔い改め、改善しようと努力するでしょう。